◆人生をかけて弁護士を目指す理由

「妻は僕に対して『働け』とも『稼げ』とも一回も言わない。かといって『私があなたを養ってあげてる』なんて上から目線なことも絶対に言わないんです」
そんな美島さんは現在、法律の勉強をして本気で弁護士を目指しているという。
「今年か来年にはロースクールを受験する予定です。願書も取り寄せてるんで」
突拍子もないように思われるが、実は美島さんは20代の頃から司法試験の勉強を細々と続けていて、これまでに何度も予備試験も受けていた。数年前には、一橋大学の大学院も受験していたという。
「僕の実家は、貧乏な借家住まいやったんです。法律上は地主と家借人は対等なはずやのに、毎月地主のおっさんが偉そうにウチに家賃取りに来て、親がペコペコ頭下げてお金払っている姿を見てたら、怒りと悔しさが込み上げてました。そのときから『金持ちと対等に渡り合える人間になりたい』っていう夢が、心の奥底にありましたね」
だが、美島さんはすでに52歳。普通なら受験を諦めてもおかしくはない年齢だ。
「なぜ、まだ夢を追い続けられるのか」
そう尋ねると、美島さんは少し考えた表情で、ゆっくりと口を開いた。

そして、またいつもの笑顔に戻って、こう続けた。
「自分の人生を『後悔してる』って言いたくないんですよ。だからこそ、あのときに選ばなかった勉強の道でも結果を出して、後悔を後悔じゃなくしたいんです」
言うまでもなく、司法試験は簡単ではない。あと何年勉強しても合格できないかもしれない。
しかし、美島さんは絶対に諦めないと決めている。
「若い頃、簡単にお金が手に入るホストという魔業に手を染めて、人生を踏み外しました。だからこそ残りの人生は、かつての僕のように夜の街の搾取構造に苦しんでいる若い子らを救える、本物の弁護士として生きていきたい。ほんで、親が生きてるうちに『光司はまっとうな人間になったよ』と安心させて、静かに人生を終えたい。これが僕の夢の最終章です」

それでも、敗北を認めたうえで前を向き、50歳を越えてもなお夢に挑もうとする姿には、成り上がりとは違う、人としての強さがある。
「なんや、揉め事かいな。よっしゃ、任せとき!」
歌舞伎町の雑居ビルに響き渡る美島さんの声を想像できるのは、筆者だけではないはずだ。
<取材・文・撮影/ワダハルキ>
―[美島光司]―
【ワダハルキ】
大阪のフリーライター・カメラマン。卓球好きが高じて大阪府立大学在学中に卓球メディア「Rallys」でライター活動をスタート。現在は卓球以外にも大学ミス・ミスターコンの取材を中心に、幅広い分野で執筆活動を行う。X:@takkyu6789、Instagram:@guid_dsij

