投資信託「手数料」の恐るべき影響力…「元値同じ・投資対象同じ・手数料だけ違う」投資商品→運用20年後、戦慄の試算結果【FPが解説】

投資信託「手数料」の恐るべき影響力…「元値同じ・投資対象同じ・手数料だけ違う」投資商品→運用20年後、戦慄の試算結果【FPが解説】

同じ投資対象でコストだけ違う「投資信託」の運用結果を試算

それでは、コストの影響を具体的な例で確認してみましょう。これを見たら、あなたも今日、投資信託の手数料を確認したくなるでしょう。

コストの違いだけで結果は67万円の差

まったく同じ投資対象に投資する「投資信託A」と「投資信託B」を比較します。投資対象は、年率4%で増加していくものとします。実際にそのような増加の仕方はしませんが、あくまでも例題です。そして、この2つの投資信託の違いはコストだけです。コストの違いは次のとおりです。

●投資信託A(低コスト商品)

購入時手数料:0%

信託報酬:年率0.06%

信託財産留保額:0%

想定リターン:年率4%

投資信託B(高コスト商品)

購入時手数料:3.3%

信託報酬:年率1.8%

信託財産留保額:0.3%

想定リターン:年率4%

この2つの商品を原資100万円で購入し、20年間保有し、20年後に売却しました。さて、結果はどのようになるでしょうか。

最終的な結果は次のとおりです[図表1](本シミュレーションの金額は、四捨五入の関係で1万円単位で数字が合わないところがあることをご了承ください)。

出典:『父が溶かした退職金 【上】感情に振り回されない「マインドフリー」投資』(ゴールドオンライン新書)より抜粋 [図表1]コストの違いによる運用成績の差(時間経過でコスト差が拡大) 出典:『父が溶かした退職金 【上】感情に振り回されない「マインドフリー」投資』(ゴールドオンライン新書)より抜粋

●投資信託A:100万円→217万円(117万円の利益)

●投資信託B:100万円→149万円(49万円の利益)[Aとの差は▲67万円]

同じ投資対象なのに、コストの違いだけで67万円もの差が生まれたのです。

2つの商品の違いはコストのみです。67万円の差はコストの差から生じています。たった数%違うだけなのに、非常に大きな差が出てしまいました。

実際にかかったコストが大きく違う。その影響は45万円

それでは、67万円の差について、もう少し細かく見ていきましょう。まず、コストがいくらかかっているのかに着目します[図表2]。

出典:『父が溶かした退職金 【上】感情に振り回されない「マインドフリー」投資』(ゴールドオンライン新書)より抜粋 [図表2]運用中にかかるコストの比較(信託報酬が最大のダメージ) 出典:『父が溶かした退職金 【上】感情に振り回されない「マインドフリー」投資』(ゴールドオンライン新書)より抜粋

購入時も保有中も売却時も、BはAよりも莫大なコストを負担していることがわかります。

トータルで投資信託Aは2万円、投資信託Bは47万円のコストとなり、BはAよりも45万円多くコストを負担しています。このコストの影響で大きく利益を押し下げたことがわかります。グラフから、購入時1回だけの購入時手数料、保有時20年間の信託報酬、換金時の信託財産留保額という3つのコストの中で、保有時にかかる信託報酬の影響が最も大きいことがわかります。

さて、売却時のAとBの資産額の差は67万円でした。そして、負担したコストの差が45万円であることがわかりました。少し数字が合いません。残り22万円の違いはどこから来たのでしょうか。

コストによって複利の効果を22万円も押し下げる

では次に利益に着目してみます[図表3]。

出典:『父が溶かした退職金 【上】感情に振り回されない「マインドフリー」投資』(ゴールドオンライン新書)より抜粋 [図表3]コストの違いによる利益額の差(複利効果が削られ続けた結果) 出典:『父が溶かした退職金 【上】感情に振り回されない「マインドフリー」投資』(ゴールドオンライン新書)より抜粋

AもBも同じ投資対象で毎年4%の利益が得られますが、AとBで積み上がる利益の額が違います。毎年の利益がBのほうが常にAより少なく、20年後の利益の積算額は、Aが118万円でBが96万円となり、22万円の差となります。

高コストなBは、毎年の手数料で資産が目減りします。目減りした資産に対して4%で増えるので、増加額も少なくなります。これが20年積み重なった結果が22万円の差です。得られる複利効果が奪われてしまったのです。

改めて数字を拾うと、原資100万円で購入した2つの商品の20年後の売却後の額は、

低コストな投資信託A=217万円(コスト2万円、利益118万円、差引117万円)

高コストな投資信託B=149万円(コスト47万円、利益96万円、差引49万円)

です。年率にして「たった1.74%の信託報酬の差」と思うかもしれませんが、これほどの差になるのです。

このシミュレーションはよくある事例と考えてよい

この例は、私が手数料や想定リターンを決めてシミュレーションしたものですが、適当に決めたわけではありません。Aはネット証券で非常によく売れている超低コストな商品、Bは対面で売られている高コストな商品と同等です。年率4%というリターンも、20年という長期で見れば妥当なレベルでしょう。

つまり、これは「よくある事例」と考えて差し支えありません。「コストを自ら吟味して購入したAさん」と「コストのことを考えずに勧められるままに購入したBさん」の違いと表現できるかもしれません。

実際には、「年率4%で増え続ける投資信託」はありません。投資信託には値動きがあり、右肩上がりで増加していくような結果にはなりません。私がここでお伝えしたいことは、『利益は不確実でも、コストはその利益を確実に蝕んでいく』ということです。コストは買う前からわかるものです。そして、運用成果に直結するものです。必ずコストを確認してから商品を購入しましょう。

※ 本記事は書籍の内容を抜粋・掲載したものであり、最新のデータ、法令・制度とは異なる場合があります。実務にあたっては必ず最新の情報をご確認ください。

小林 篤典
FP事務所 きずな 所長

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