
政府の後押しもあり、資産形成を目的とした投資にチャレンジする人が増えています。しかし一方で、「毎日株価アプリを見てハラハラしている」「暴落が怖くて夜も眠れない」という人も少なくありません。将来の安心のための投資が、今の心の平穏を乱すという、本末転倒な状況になっているのです。いったいどうすればいいのでしょうか。 6月に『父が溶かした退職金(上)(下)』を刊行した小林篤典氏にインタビューし、運用成績に動揺しないための行動と、商品選びの基本について話を伺いました。
「1年のうち、364日は投資を忘れる」という真意
――将来の安心のための投資のはずが、値動きが気になって気持ちが落ち着かない…という方もいるようです。いったいどうしたらいいのでしょうか。
小林先生(以下、小林):
投資を始めると、朝起きてすぐ、昼休み、夜寝る前…などと、1日に何度もスマホで値動きをチェックしてしまう人がいます。しかし、いくら画面を凝視したところで、株価が上がるわけではありません。それどころか、日々の小さな値動きに感情を揺さぶられ、仕事や私生活に悪影響が出てしまう。これは非常に実のない、もったいない時間の使い方です。
本来、投資は人生を豊かにするための手段であり、生活の主役になってはいけないのです。世界の経済は、私たちがスマホを見ていようが見ていまいが、長期で見れば関係なく成長していきます。それを信じられるのであれば、アプリを閉じて、完全に「ほったらかし」にしておくのが正解なのです。それが、心穏やかにお金と付き合い、投資していることすら忘れる投資、「マインドフリー投資」という考え方です。
[図表]世界全体の実質GDP総額(2015年米ドル換算) 出所:世界銀行
「分散投資=商品をたくさん持つ」ではない
――先生が提唱する「マインドフリー投資」ですが、これを実践するには、どのような商品を選べば良いのでしょうか。書籍では「商品は2つで十分」と書かれていますね。
小林:
はい。徹底的にシンプルにするなら、投資する商品は「攻める商品が1つ、守る商品が1つ」の合計2つで十分です。
多くの投資初心者が誤解しているのですが、投資の基本である「分散投資」とは、たくさんの金融商品をバラバラと持つことではありません。今は、世界中の何千という企業に1本で広く分散投資ができるパッケージ商品(投資信託など)が、非常に低いコストで用意されています。
それなのに、投資を始めると「あれも良さそう、これも良さそう」と、勧められるがままにいろいろな商品を買ってしまい、気づけば管理しきれなくなっている人が実に多い。たくさん種類をそろえたはずが、よく見ると日本株ばかりを買い集めていた…などと、まったく分散になっていないケースもよく見られます。
商品が増えれば増えるほど、一般の方は管理がむずかしくなり、目が届かなくなることで不安が増します。それを防ぐには、自分が100%納得し、中身を管理できる最小限の商品に絞ることです。少なければ少ないほど、圧倒的に維持しやすくなります。
