
退職金を受け取った人は、人生において「最も多くの現金を保有している」状態。そして、そんな状態にあることを、銀行は把握しています。多くの人は、そこから「退職金デビュー」することになりますが、手痛い結果となることもしばしばです。本稿は、小林篤典氏の著書『父が溶かした退職金 【上】』(ゴールドオンライン新書)から一部を抜粋・再編集したものです。
「お金はある、プライドもある、知識がない」という大問題
「退職金で投資デビューして大失敗」という話はよく聞きます。
退職金をもらった人にはどのような特徴があるかを考えてみましょう。退職金を受け取ったばかりですから、いままでの人生で「最も手元に現金がある」状態です。そして、金融教育を受けておらず、投資経験もない人が多いかもしれません。さらに、長い間の社会人生活でそれなりの立場に立ってきた人なら、プライドもあるかもしれません。
つまり、「お金はある、プライドもある、知識がない」というイメージが当てはまります。ここからは私の推測ですが、次のような展開になる可能性はないでしょうか。
①退職金が金融機関に振り込まれる
銀行「〇〇さんに退職金が振り込まれたぞ」
②金融機関から電話がかかってくる
銀行「普通預金に置いていてはもったいないです。相談に乗りますから1度ご来店を……」
顧客「わかりました」
③応接室に通され特別扱いに
銀行「どうぞこちらへ……」
顧客「ほほう……」(特別扱いされ、いい気分)
④アピールタイム
銀行「退職おめでとうございます。普通預金では増えません。こんな商品はいかがですか?」(商品説明タイム)
顧客「なるほど……」(全くわかってない……)
⑤プライドが邪魔をする
銀行「いかがですか?」
顧客「い、いいですね……」(わからないなんて言えない。銀行の勧めなら大丈夫?)
⑥なし崩し的に購入
銀行「ありがとうございます!」
顧客「では……」(退職金の2割ぐらいならいいか)
こんな感じで、投資をスタートしてしまう人がいるかもしれません。
勧められるままの行く末、退職金は…
さて、この人の退職金はその後どうなるでしょうか。
退職金の2割程度で終わればよいですが、このパターンを繰り返し、退職金の大半を投資に回してしまう人もいます。場合によっては、その後、売買を繰り返す例もあります。
相場が良くて、利益が出て「成功した」と思えればよいですが、値下がりして大きな損失となる人もいます。退職金デビューの失敗パターンの典型例です。未来は簡単に予測できません。投資で成功するか失敗するかは、投資に取り組むスタンスに大きく影響されます。勧められたまま売買していると、多くは失敗します。
ここでいう「失敗」とは、値下がりだけを意味しません。商品に含まれる高額な手数料によって、失敗に導かれることでもあります。
●購入時に高額な購入時手数料を払う
●持っている間もずっと高額な信託報酬を払う
●勧められて売買して、また高額な購入時手数料を払う
●(これを繰り返し)
退職金の多くがなくなってはじめて気づくこともあるのです。
決して金融機関を悪く言いたいわけではありません。仕組みそのものに危険があることを知っておきましょう。本当に気をつけてほしいと思います。
