お母さん、ごめんなさい…〈年金月11万円〉84歳母を老人ホームに入居させた56歳娘の後悔。面会のたびに胸を締めつけた「母の願い」【元介護施設職員のFPが解説】

お母さん、ごめんなさい…〈年金月11万円〉84歳母を老人ホームに入居させた56歳娘の後悔。面会のたびに胸を締めつけた「母の願い」【元介護施設職員のFPが解説】

親が高齢になってくると、子どもとしては「親の介護」と「終の棲家」が悩みの種となります。「時間」と「お金」の不足に悩み、誤った選択をした場合、その後の事態に“八方塞がり”となる可能性も……。親子の事例をもとに、介護施設職員でFPの武田拓也氏が、介護で後悔しないための原則について解説します。

「介護離職」で献身的に介護も限界…追い詰められ選んだ「実家の売却」

「あの家に帰りたい。お願いだから連れて帰って……」

涙を流し、そう訴えるフミエさん(仮名・84歳)を前に、娘・アキコさん(仮名・56歳)は胸を締めつけられる思いがしました。なぜなら、母の暮らしの痕跡が色濃く残る「我が家」には、もう二度と戻れないからです。

事の始まりは、数ヵ月前。アキコさんは、働きながら一人でフミエさんを介護していましたが、しだいに介護度が重くなり、一大決心をして会社を退職。いわゆる「介護離職」の道を選びました。

しかし、このままでは共倒れになると感じたアキコさんは、フミエさんを近所にある老人ホームに入れることにしました。

しかし、フミエさんの年金は月に約11万円。これだけでは施設の費用を賄うことはできません。熟考の末、長年暮らした実家を売却し、その資金を入居一時金や月額利用料に充てることにしました。

「これで母も安心して暮らせるはずだし、私も介護から解放される」

当時はそれが最善の選択だと信じて疑いませんでしたが、現実は甘くありませんでした。

「帰る場所」をなくした母、仕事のない娘

高齢の母親にとって、環境の変化が想像以上にストレスだったようです。フミエさんは新しい生活に馴染めず、他の入居者との交流も拒み、部屋に引きこもりがちになってしまいます。

面会のたびに「あの家に帰りたい」と泣きつかれるものの、実家はすでに他人の手に渡っています。フミエさんに「お母さん、ごめんなさい……。家はもうないの」と告げるたびに、アキコさんの心は引き裂かれそうになりました。

さらに、アキコさん自身にも厳しい現実が待ち受けていました。「介護が落ち着いたらすぐに再就職できる」と考えていたものの、50代の転職市場は厳しく、思うように職が決まりません。

収入が途絶えたまま、気がつけば資産は激減。実家を売却した資金があるとはいえ、フミエさんの施設費用で毎月確実に目減りしていきます。自身の老後資金はおろか、日々の生活さえ脅かされるようになり、親子ともに“八方塞がり”の状況に陥ってしまったのです。

「あのとき、会社を辞めなければ」「実家を売る以外の選択肢があれば」と、溢れ出るのは後悔の言葉ばかりでした。

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