「介護離職×実家売却」はその後の選択肢を狭める
アキコさんの事例には、多くの現役世代が陥りがちな「2つの誤算」があります。
1.介護離職は「家計破綻」の入り口
介護のために仕事を辞めると目先の時間は確保できますが、月々の収入だけでなく、将来もらえる自身の年金まで減少してしまいます。また、介護が落ち着いたタイミング(50代など)からの再就職は容易ではなく、一度手放した「安定収入」を取り戻すのは至難の業です。
2.不動産(実家)の売却は「最終手段」
実家を売却するということは、「引き返せない片道切符」を買うことと同義です。今回の事例のように万が一、施設が合わなかった場合は「自宅へ戻る」という選択肢を自ら失うことになります。
介護で後悔しないための「3原則」
もし、同じような状況に陥った場合に備え、次の3つの原則を覚えておきましょう。
1.介護は「介護保険サービス」や支援を活用する
介護は家族が仕事を辞めてまで背負うものではありません。まずはケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、ショートステイやデイサービス、訪問介護などを組み合わせ、「仕事を辞めずに介護できる仕組み」を整えましょう。
2.介護費用は「親の財布」の範囲でやりくりする
原則として、親の介護費用は「親の年金+親の預貯金」の範囲で賄いましょう。資産に余裕がない場合は、特別養護老人ホームやケアハウス(軽費老人ホーム)など、比較的負担の少ない選択肢もあります。子世代が身銭を切ったり、自分の生活を犠牲にしたりしてはいけません。
3.実家売却時は「貸家」や「リバースモーゲージ」も検討する
実家を活用してまとまった資金を得たい場合でも、売却以外に「定期借家」として賃貸に出す方法や、自宅を担保に融資を受ける「リバースモーゲージ」という方法があります。こうした「いつでも家に戻れる選択肢」を残すことで、経済的にも心理的にも大きなリスクヘッジになります。
「親のために」という優しい想いが、かえって親子双方を苦しめてしまうことがあります。自分だけで判断せず、まずは専門家や地域包括支援センターに相談し、経済的なシミュレーションを冷静に行うことが、大切な家族の笑顔と、あなた自身の人生を守ることにつながるでしょう。
武田 拓也
元介護施設職員/FP
