「宇宙の鎖国」が始まっている…ヨーロッパや中国がこぞって自前のロケットと衛星を急ぐ、「SpaceX独占」に対する国家の焦燥感

「宇宙の鎖国」が始まっている…ヨーロッパや中国がこぞって自前のロケットと衛星を急ぐ、「SpaceX独占」に対する国家の焦燥感

自前ロケットで圧倒的優位に…「SpaceX」独り勝ちの背景

Starlinkは、2026年2月時点で1000万人超の加入者を抱える。2025年時点の年間収益は約118億ドルと推計される。

一方で、この衛星コンステレーションを維持するには、年間1800〜2400基の衛星を打ち上げ続けなければならない。衛星の製造費と打ち上げ費用を合わせると、設備投資は年間40億ドル規模に達するとみられている。

SpaceXがStarlinkを維持できるのは、打上げ手段(Falcon9、Starship)を自社で持ち、打上げコストを外部の5分の1以下に抑えられるからだ。これは垂直統合なしには成立しない経済モデルであり、参入障壁は資本力だけでなく、打ち上げ手段そのものにある。

この参入障壁が競合を阻んでいる。Amazon Leoの2026年4月時点での軌道上の衛星台数は約241基でStarlinkの約40分の1にとどまる。Amazon Leoは米連邦通信委員会(FCC)から認可を受けた衛星配備スケジュールを期限通り守れなくなる見込みで、期限延長の申請を余儀なくされた。

2020年に英国政府とインドのBharti Globalが共同救済し、2023年にフランスEutelsatと合併したEutelsat OneWebも2026年4月時点で654基止まりだ。

打ち上げ手段を自社で持たない事業者は、衛星を軌道に送るたびに、SpaceXを含む外部の打ち上げ事業者に依存せざるを得ない。参入障壁が資本ではなく打ち上げ手段にあることを、競合の苦戦が裏付けている。

衛星通信はあくまで海底ケーブルの“セーフティネット”

衛星コンステレーションは海底ケーブルのセーフティネットだ。帯域コスト、遅延の安定性、大口法人向けSLAのいずれにおいても、海底ケーブル経由の地上回線が通信の主幹であることは変わらない。

衛星通信の戦略的価値は、予備回線と到達困難地域の補完にある。TeleGeographyが2025年開催の海底光ケーブル技術国際会議SubOpticで示した試算によれば、海底ケーブル1本の建設費約5.2億ドルで480Tbpsの帯域が得られるのに対し、Starlinkコンステレーション全体の投資額150億ドルで得られる長距離バックボーン代替としての推定実効帯域は約5Tbps2。

ビットあたりコストの差は2768倍に達する。衛星が海底ケーブルを代替する日は、技術的にも経済的にも遠い。

白畑 真

さくらインターネット株式会社

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