来店客はカードで支払いを済ませた。店も料理や酒を提供した。にもかかわらず、その売上が店に入ってこない――。飲食店からすれば、これほど理不尽な話はない。
未入金分は取り戻せるのか。全東信や経営陣に責任を問うことはできるのか。破産した会社を相手に、飲食店は泣き寝入りするしかないのか。アディーレ法律事務所の大垣優希弁護士に聞いた。

◆全東信破産で何が起きているのか
全東信は、飲食店向けにクレジット決済代行サービスを展開していた企業だ。飲食店が導入すれば、来店客はクレジットカードで支払いができる。カード会社から全東信に入金された売上金を、全東信が各店舗に送金する仕組みだった。飲食店にとって、クレジット決済はもはや欠かせない。現金を持たない客も増え、単価の高い店ほどカード利用の比率も高くなる。一方で、カード会社との契約や入金管理は煩雑で、入金までのタイムラグもある。そのため、決済を一本化し、早期入金も期待できる決済代行会社は、多くの店にとって便利な存在だった。
ところが、その全東信が破産したことで、カード会社からの入金は済んでいるにもかかわらず、全東信から飲食店への送金が止まっているケースが生じている。客側の支払いは終わっているのに、店側の売上としては宙に浮いたままになっているのだ。
「料金が高いお客さんほどカード払いが多いんです。確認している被害額は7月5日までで約300万円。仕入れ先への支払いやスタッフの給料もあるので、正直、かなり厳しいです」(48歳・焼肉店経営)
飲食店にとっては、単なる「取引先の倒産」では済まない。数日分、数週間分のカード売上が入ってこなければ、仕入れ代、人件費、家賃の支払いに直結する。特に、カード決済比率が高い店舗ほど打撃は深刻だ。
「うちは会計の半分以上がカード決済です。数週間分が止まるだけで数百万円単位の穴になる。しかも次の決済会社にすぐ切り替えられるわけでもなく、営業を続けながら資金繰りだけ悪化していくのが怖いです。『たいへんだろうから』と現金で遊びに来てくれる常連さんがいるのがせめてもの救いです」(45歳・ガールズバー経営)
◆未入金の売上金は取り戻せるのか
では、全東信から入金されていない売上金は、飲食店に戻ってくるのか。大垣弁護士は破産手続上の扱いをこう説明する。
「飲食店が持つ未入金の売上金に関する請求権は、原則として破産手続における一般の破産債権として扱われることになります。破産財団の財産を換価した上で、債権額に応じて配当が行われますが、負債総額が約1151億円という規模を考えると、実際にどれだけの配当が受けられるかは不透明です」
つまり、飲食店は破産債権者として届出を行い、破産手続に参加することになる。ただし、全額が戻ってくる保証はない。むしろ、負債規模の大きさを考えれば、回収は厳しいと見るべきだろう。
「もし飲食店が全東信に対して、自身の売上金を分別管理するよう求めていた場合や、契約上そのような義務が定められていた場合には、当該資金を取り戻せる余地が生じることもあります。ただし、実際に分別管理がなされていたかどうかは個別の事実関係によるため、まずは契約書や取引の実態を確認することが重要です」
要するに、店側の売上金が全東信の財産と混ざらず、別に管理される契約や実態があったのかどうかが分かれ目になる。

