客は払ったのに店には1円も入らない…負債1151億円「全東信」の破産で、経営陣への責任追及は問えるか

客は払ったのに店には1円も入らない…負債1151億円「全東信」の破産で、経営陣への責任追及は問えるか

◆「全東信に損害賠償」はできるのか

全東信
全東信ホームページ
未入金の売上が戻ってこない場合、飲食店は全東信に対して損害賠償を求めることはできるのか。

大垣弁護士によれば、契約違反や不法行為を理由に損害賠償請求を主張すること自体は考えられる。ただし、全東信はすでに破産手続に入っている。仮に損害賠償請求権が認められても、実際には破産債権として扱われ、配当を待つことになる可能性が高い。

つまり、「請求できるか」と「実際に回収できるか」は別問題というわけだ。

飲食店側からすれば納得しがたいが、破産手続では、限られた財産を債権者の間で公平に分配することが原則になる。そのため、個別の店舗が「うちの売上を先に返してほしい」と主張しても、法的に優先権が認められなければ、他の債権者と同じ立場で配当を待つことになる。

会社に請求しても回収が難しいとなれば、次に気になるのは「経営陣個人の責任を問えないのか」という点だ。

「会社の取締役は、会社に対して善管注意義務・忠実義務を負っています。著しく不合理な経営判断や、財務状況が悪化しているにもかかわらず事業を継続して損害を拡大させたような場合には、取締役個人に対する損害賠償請求が認められる可能性があります」

会社が倒産したからといって、経営者が常に個人責任を負うわけではない。事業にはリスクがあり、経営判断が結果的に失敗しただけで、ただちに役員個人の責任が認められるわけではない。

しかし、財務状況が著しく悪化していることを知りながら営業を続けた、資金繰りが破綻しているのに新たな加盟店から売上金を受け取り続けた、不正な会計処理や資産水増しがあったーーといった事情が認められれば、話は変わってくる。

大垣弁護士は、第三者に対する責任規定にも触れる。

「役員等がその職務を行うについて悪意または重大な過失があった場合には、第三者――ここでは飲食店――も取締役個人に対して損害賠償を請求できます」

また、不正な資金流用や詐欺的な行為があった場合には、刑事責任の問題にも発展し得るという。

「民事上の責任追及も刑事告訴も、具体的な証拠と事実関係の整理が不可欠です。まずは専門家に相談し、手元にある契約書・入金履歴・取引記録を整理することが第一歩です」

◆カード会社や金融機関の責任は問えるのか

全東信だけでなく、「カード会社や金融機関には責任はないのか」と感じるかもしれない。

カード決済の仕組みでは、カード会社、決済代行会社、加盟店が複雑に関係している。店側から見れば、客がカードで支払いを済ませた時点で売上は発生している。にもかかわらず、途中に入った決済代行会社の破産によって入金が止まるのであれば、カード会社にも何らかの責任を問えないのか、という疑問が生じる。

大垣弁護士はこの点について、基本的には全東信との契約関係の問題になるとしたうえで、個別の契約内容やカード会社の関与の程度によっては検討の余地があると説明する。

「全東信を通じてカード決済を導入していた場合、原則として飲食店と全東信との契約関係が中心になります。カード会社や金融機関に直接責任を問えるかどうかは、飲食店との間に直接の契約関係があるか、カード会社側がどこまで加盟店管理や入金スキームに関与していたかなど、個別事情によって変わります」

つまり、カード会社や金融機関に対する責任追及は、全東信への請求に比べてハードルが高い。ただし、契約書や決済スキーム次第では、まったく可能性がないとも言い切れない。


配信元: 日刊SPA!

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