「危険な再生医療」に潜む3つの法的リスク
悪質なクリニックや、コンプライアンス(法令遵守)意識の低い医療機関に関わってしまった場合、患者側には以下のような法的リスクや不利益が生じます。
①医療広告等ガイドライン違反(誇大広告)
「100%若返る」「ガンが完全に治る」「副作用は一切ありません」といった極端な表現や、科学的根拠(エビデンス)のない体験談を多用して勧誘する行為は、医療法に基づく「医療広告ガイドライン」に違反している可能性が極めて高いと言えます。誇大な効果を信じて契約した場合、後々「騙された」と気づいても、契約書の文言を盾に返金に応じてもらえないケースが目立ちます。
②インフォームド・コンセントの形骸化(説明義務違反)
医療行為において、医師は患者に対して治療のメリットだけでなく、「リスク(副作用)」「代替となる他の治療法」「費用」について十分な説明を行う法的義務(説明義務)を負っています。 危険なクリニックでは、メリットばかりを強調し、デメリットに関する説明を口頭で済ませたり、極めて小さな文字の同意書にサインをさせたりして、説明義務を果たしたという「形」だけを作ろうとします。
③トラブル発生時の「自己責任」の押し付け
未認可の再生医療や、医師の管理が不適切な治療によって健康被害が生じた場合、クリニック側が「同意書にサインしている」「自由診療は自己責任」として、責任を回避しようとするトラブルが多発しています。また、裁判を起こそうにも、ずさんなカルテ管理や治療記録の隠蔽により、過失の立証が困難になるリスクがあります。
「安全な再生医療」「危険な再生医療」の見分け方
では、大切な資産と健康を守るために、どのように医療機関を見極めればよいのでしょうか。弁護士の視点から、必ず確認すべき「4つのチェックポイント」を提示します。
【チェック①】厚生労働省への届出がなされているか
これが最も確実で最低限のフィルターです。適切な手続きを行っている医療機関であれば、必ず厚生労働省に対し「再生医療等提供計画」の届出がされています。
厚生労働省のウェブサイト内にある「再生医療等提供機関一覧」のページや日本再生医療学会の「再生医療ポータル」のサイトで、そのクリニックと治療内容が実際に登録されているかを一般の人でも検索・確認できます。
ここに掲載されていない治療を勧めるクリニックは、その時点で選択肢から外すべきです。
【チェック②】書面によるリスク説明と「考える時間」が与えられるか
優れた医療機関ほど、再生医療の限界や予期せぬ副作用のリスクを丁寧に説明します。
●治療に伴う具体的なリスクや合併症が書面に明記されているか
●セカンドオピニオンを推奨してくれるか
●高額なコースを「今日契約すれば割引」などと即日契約を迫ってこないか
これらをチェックしてください。熟考する時間を与えないクリニックは、患者の健康よりも売上を優先している証拠です。
【チェック③】料金体系が明確で、契約書・領収書が適切に発行されるか
「治療費一式」としてブラックボックス化されているケースは危険です。
初診料、検査料、細胞採取料、培養料、投与料などが細分化され、万が一途中で治療を解約・中断した場合の「返金規定(中途解約条項)」が契約書に明記されているかを確認してください。
【チェック④】独自の「健康被害補償制度」や保険に加入しているか
自由診療の再生医療には国の公的救済制度が適用されません。だからこそ、医療機関側が独自に「補償措置」を講じているかが極めて重要な判断材料になります。
現在、日本再生医療学会などは、医師に法的責任(過失)がない場合であっても患者を保護する観点から、「再生医療サポート保険(治療補償)」などの民間補償制度を用意しています。
安全への意識が高いクリニックは、こうした「無過失補償」に対応した民間保険に自ら加入しており、万が一の際の補償体制を契約前に明確に説明してくれます。「健康被害に対する独自の補償規定がない」「医師のミスしかカバーしない通常の医師賠償責任保険にしか入っていない」というクリニックは、リスク管理が不十分と言わざるを得ません。
