駅前や商店街、スーパーの一角などで、派手な文字で「高価買取」を掲げる店が目立つようになった。「大黒屋」「買取大吉」「おたからや」「バイセル」──。空きテナントが出たと思ったら、いつの間にか買取専門店に変わっている。かつて街にタピオカ店が相次いで出現した時期を思わせるほどの勢いだ。

ネット上では「買取店いくらなんでも多すぎる」「買取店が増えすぎて不気味」といった声もある。なぜ今、これほど買取店が増加しているのか。その背景には、金相場の高騰、物価高、フランチャイズ(FC)による参入障壁の低下、そして大手優位の業界構造がある。
6年で2倍近く爆増の「買取サービス市場」
買取サービスは、消費者から貴金属、ブランド品、時計、着物などを買い取り、店舗やECサイト、業者間市場、海外などで再販売する事業だ。
消費者庁が2025年4月に公表した実態調査によると、買取サービスの市場規模は2018年の7843億円から、2023年には1兆3274億円まで拡大した。6年間で約1.7倍になった計算だ。2023年の取引形態は店頭買取が78.2%を占め、出張買取の10.0%、宅配買取の9.5%を大きく上回る。実店舗が依然として最大の仕入れ窓口であることも、街中への出店を後押ししている。
市場拡大の追い風の一つが金相場の急騰だ。以前なら値段が付かないと思われていた古い指輪や壊れたネックレスでも、金が使われていれば驚くような値段になることがある。物価高も市場を押し広げており、新品より安い中古品を選ぶ人が増える一方、手持ちのジュエリーやブランド品を現金化したいという需要も高まった。
買い取った商品を業者間市場などで再販売し、比較的早く現金化できるので在庫リスクが少ないことも、このビジネスの強みだ。円安によって、日本の中古ブランド品や貴金属を求める訪日客や海外業者が増えたことも販路拡大につながっている。
素人でも開業できる仕組みの正体
急増のもう一つの理由は、FC化によって参入のハードルが下がったことだ。
かつての質店では、品物の真贋や相場を見抜く「目利き」の知識や技術が不可欠だった。しかしFC加盟店であれば、商品の画像や情報を本部に送り、査定額や真贋について相談できる。本部による研修があることに加え、スマートフォンで写真を撮ると真贋を判定してくれるAIサービスや、貴金属の成分を非破壊で調べる分析装置などもあり、専門知識が乏しくても開業しやすい。
チェーンによっては、加盟店が仕入れた商品を本部が買い取る仕組みもあり、在庫リスクはさらに少なくなる。また、広い売り場や大量の商品陳列は必要なく、小さな物件をオーナーと少人数のスタッフで運営できるので人件費も抑えられる。飲食店のような大掛かりな設備も不要だ。空きテナントを埋めたい商業施設側との相性もよく、短期間で店舗網を広げやすい。
もっとも、市場が伸びているからといって「どの店ももうかっている」というわけではない。
東京商工リサーチが今年5月に発表した業績動向調査では、リユース業で最新期に黒字だった企業は207社で、全体の82.4%を占めた。一見すると順調だが、前期より利益が増えた企業は99社だったのに対し、減益は106社。減益が増益をわずかに上回っており、企業間の利益格差が広がる兆しが見えている。