そんなタフな現場で活躍している女性がいる。株式会社ギアミクス ロープアクセス事業責任者の矢部由季奈さん。

◆販売一筋だった女性が、「ロープアクセス」の世界へ
高校2年生の頃からアパレルショップでアルバイトを始め、高校卒業後もしばらくその仕事を続けていた矢部さん。その後、新たな挑戦として生命保険会社に入社したものの、「営業の仕事は思うように成果が出ず、精神的にもかなり辛くて、半年ぐらいしか続かなかった」と思い返す。次の仕事を探すなかで、自宅近くの靴店の求人を見つけ、実際に働いてみると「接客業は自分に合っている」と感じ、気づけば5年ほど勤めることに。
転機になったのは、彼氏(現夫)のアドバイスだった。
「当時、交際中だった今の夫から、『一度外の世界を見てみたら』と背中を押され、あらためて自分のやりたいことと向き合いました。それまで販売の仕事しかしてこなかったんですが、実はキャリアウーマンへの憧れもあったんです。

ロープアクセスとは、屋上から垂らしたロープを伝って作業員が下降し、外壁の補修や調査を行う工法のこと。足場やゴンドラを設置する必要がないため、工期を大幅に短縮できるうえ、仮設費用も抑えられる。
また、狭い場所や足場の設置が困難な環境でも柔軟に作業できるほか、修繕が必要な箇所だけをピンポイントで施工できるため、コストパフォーマンスも高い。
このような理由から、多くの建物オーナーから支持を集めているのだ。
◆男性との体力差を補うには“気合”と“根性”しかなかった
しかし当時は建築に全く興味はなく、ロープアクセスのことすらも知らなかったという矢部さん。だがある日、上司から人手不足を理由に、ロープアクセスの「安全監視員」として現場への同行を頼まれる。
そこで初めて、ロープアクセスの仕事を間近で見た。

さらに、迅速な作業でお客様を笑顔にしている姿にも大きな魅力を感じました。気づけばその日のうちに、事務職からロープアクセス技術士へとキャリアチェンジしたい旨を、上司に直談判していました」
大変さや怖さといった不安よりも、ただ純粋に「やってみたい」。
そのような気持ちが強かったというが、やはり作業面に関しては男性との体力・筋力の差で不利に感じることがあったとか。
「特に補修現場で工具を運んだり、外壁のシールをカッターで撤去したりする作業は、非常に力を要するものでした。周囲の男性作業員たちが次々と仕事をこなしていくなか、自分だけが思うように進められず、苦戦することもよくありました。
じゃあそれをどうやって解決したかというと、もう最後は“気合”と“根性”しかなかったんです(笑)。『この腕がどうなってもいい』と思うくらい全力を尽くし、毎日の作業に必死に取り組んでいましたね」

