◆バットが振れなくなったのに、登録抹消されず
幸先の良いスタートを切った石毛だが、ロッテとの開幕3戦目にプロの洗礼を浴びる。「相手投手の奥江英幸さんからデッドボールを受けました。打ちにいったらボールが来たので、『あっ!』と思って逃げたら左手首付近に直撃してしまったんです。それでも『大丈夫か』と思って試合に出て続けていたのですが、バットを振っても痛いし、ボールをキャッチしただけでも痛い。
さすがに無理だなと思い、根本監督に『ちょっと手が痛いです。バットも振れなくなりました』と言ったら、『じゃあいいや。お前、足は使えるんだな?』と聞かれたので、『はい』と返事をして。その後、途中でベンチに下がりました。かなり痛みがあったので、普通はすぐに病院へ行ってレントゲンを撮ったりするものですが、行かなかったんです。いまの時代であれば即登録抹消して元気な選手と入れ替えると思いますが、根本監督からは『抹消はせんからな』と言われていました。
『これからロッテ以外の4チームと対戦するよな。相手のピッチャーがどんな顔で、どんなフォームで投げるのか。どんな野手がいるのか。まずは目で見ろや』と言って、ベンチに置いてくれたんです。プロ1年目に好成績を残せたのは、この時の根本監督の判断が大きかったと思います。西武のほか、広島東洋カープや福岡ダイエーホークスの黄金時代の礎を築きましたし、さまざまな球団や立場で敏腕を辣腕を振るってきた方ですから。『さすが名伯楽だな』と改めて思いましたね」
◆好成績を残すも、自信はなかった
石毛はチームの遠征にも帯同し、相手チームの選手を目で見て研究。ケガは徐々に回復し、4月28日の日本ハムファイターズ戦でスタメンに復帰した。「痛みがなくなってバットが振れるようになるまで3週間かかりましたし、おそらく亀裂骨折だったんじゃないかと思っています。ただ、相手をじっくり研究できたことが功を奏し、復帰以降はガンガン打てました。シーズン終盤まで、落合博満さんと首位打者争いもできましたしね。
『山田久志さんや木田勇さんは、ああいうフォームでああいうボールを投げるんだ』と自分の目で分析できていたので、ある程度のイメージを持って打席に入れたことがよかったんだと思います。球筋まではわからないんですけどね」
プロ1年目に好成績を残した石毛。さらなる自信を持って2年目を迎えたと思いきや、継続してプロでやっていけるとは考えられなかったという。
「とにかく目の前の試合に、遮二無二向かっていました。自信なんてまったくなかったです。ただ、こういうことは言えるかもしれません。西武に入ってきた清原和博も、1年目にすごい成績(126試合出場、打率.304、31本塁打、78打点)を残したじゃないですか。しかも、彼の場合は高卒1年目で。自分の勝手な考えなのですが、おそらくセンスがある選手は、プロ入り間もない頃が一番旬なんじゃないかと思っているんです。中日で早くから活躍していた立浪和義もそうです。
何年かプロでやると経験やデータが蓄積されていきますが、1年目は来たボールを打つだけ、飛んできたボールを捕って投げてアウトにするだけ。つまり、本来その選手が持っているセンスを素直に発揮できると思うんです。当然、センスだけではなく、アマチュア時代に培ってきた身のこなしや技術論がしっかりしていることが前提ですよ。そういった部分も評価され、ドラフト上位でプロの世界に入ってくるわけですし」

