「家を失った。でも、これでよかった」…購入から21年、“住宅ローン完済”を断念した66歳男性がポツリ。移り住んだ〈家賃3万7,000円・都営住宅〉の一室で【FPが解説】

「家を失った。でも、これでよかった」…購入から21年、“住宅ローン完済”を断念した66歳男性がポツリ。移り住んだ〈家賃3万7,000円・都営住宅〉の一室で【FPが解説】

「家を守る」より「生活を守る」――公営住宅で気付いた、本当に大切なこと

FPの助言を受け、佐々木さんは金融機関と協議のうえ、住み慣れたマンションを任意売却する決断をしました。築約21年のマンションは約2,700万円で売却され、住宅ローンを完済。諸費用を差し引いて、今後の生活資金として約700万円を確保できました。

その後、入居条件を確認したうえで東京都営住宅へ応募し、単身向け住宅への入居が決まります。家賃は約3万7,000円となり、住居費は大幅に減りました。

民間の賃貸物件も検討しましたが、単身の高齢者は保証人や審査のハードルが上がりやすいのが実情です。また、都営住宅の単身者向けには60歳以上の世帯を対象とした所得基準(年間257万円程度以下)があり、年金収入は税制上の控除により額面よりも低く算定されるため、佐々木さんの年金収入(額面年246万円)もこの基準の範囲内に収まりました。

家賃を抑えて固定費を圧縮し、少しでも今後の生活資金を厚くしたいという思いもあり、佐々木さんは都営住宅を選んだのです。

「あのとき『退職金を増やそう』と思ったことが、すべての間違いでした。マンションを手放したときは人生が終わったと思いました。でも今は、あの決断をしてよかったと思っています。毎月の支払いを心配せず暮らせることが、一番の安心ですから」

家を手放すことが、人生を諦めることではない

今回、佐々木さんは任意売却と都営住宅という選択肢にたどり着けました。しかし、資産や収入の状況によっては、これだけがゴールではありません。支出を見直す、働き方を調整する、あるいは生活保護をはじめとする公的な支援制度を利用する――お金や住まいに困ったときの選択肢は、一つではないのです。

「貯金も家も失ったら、もう終わりだ」と一人で思い詰める前に、まずは声を上げてみることが、次の一歩につながります。

老後は、「家を守ること」と「生活を守ること」が同じとは限りません。家を手放すことが、人生を諦めることではありません。判断に迷ったときは、一人で抱え込まず、警察や消費生活センター、金融機関、FPなどへ早めに相談することが、生活を立て直す第一歩になるのではないでしょうか。

出所:警察庁「令和6年におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の情勢について」https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2025.pdf

三原 由紀
プレ定年専門FP®

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