◆プロである以上、ある程度の管理は必要
プロ1年目に体験した自由奔放な環境が、逆に管理野球の大切さを気づかせてくれた。「そもそも幼い頃から野球をやっている人間は、ずっと縦社会で育ってきていますよね。監督や先輩が言うことには従わざるをえませんし、門限はあるわ、ルールを破れば鉄槌が下されるわ……いわば管理されてきたわけじゃないですか。
そういった管理野球を実践したのが、川上哲治さんが率いたV9時代の読売ジャイアンツです。だからこそ、強くなったと思うんです。長嶋茂雄さんや王貞治さんというスーパースターがいたことも大きいですが、チーム全体が管理されていた。そりゃ朝方まで飲み食いして試合に出るよりも、ある程度の睡眠時間を確保して出たほうがよっぽどいいパフォーマンスができますよ。
ただ、西武に入団して1年目は、選手の自主性に任せていたこともあって本当に自由でした。『プロの世界はこういうものなのかな』と思ったり、どこかで『これで強くなるのか?』という思いもありました。今振り返ると、逆にそういう1年目を過ごしたことがいい経験でした」
◆デーブ大久保と清原に対して落とした雷
チームリーダーとしての振る舞いや行動について聞くと、石毛は決まって『大したことはしていない』と謙遜するが、チームメイトの行動を常に俯瞰視していなければ、あれだけの実力者たちがそろったチームの方向性を正すことはできない。「近年、デーブ(大久保博元)と話す機会があったんです。その時に『石毛さん、覚えていますか?』と。何のことかわからなったのですが、デーブが西武に在籍していた頃、どうやら私に怒られたことがあるようで、その時のことを話してきたんです。
試合に負け、帰りのバスに乗っている時のこと。普通、負けると車内の雰囲気は重いというか、静まりかえっているわけです。ただ、その日はデーブとキヨ(清原和博)が後ろのほうでぺちゃくちゃ喋っていたんです。バスが宿舎に着き、前のほうに座っている監督やコーチらが降りた後、私がデーブとキヨの足をとめて、『お前ら、負けた時くらいは試合の反省をしろ』と叱ったようで……。記憶は定かではないのですが『石毛さんに言われたら仕方がないと、当時思っていました』とも言っていましたね。
プロ野球選手は一人ひとりが個人事業主であり、いい大人ですから、言われたほうは『何を言っているんだ?』と思うこともあるかもしれませんが、私に言われたのであれば仕方がないと言ってくれていたので、チームリーダーというのはおこがましいけれど、一目置いてくれていたのかなという気はしますね」
チームリーダーの形は、年齢を重ねるにつれて変化していった。
「自分が若い頃は、みんなの前で旗を振って『おい!こっちだぞ!』と先導しなきゃいけない意識もあったかもしれませんが、ベテランと呼ばれるような年齢になっていくと、前で引っ張るよりは後ろに立って、『おい!清原!ちょっと枠を出ているぞ。工藤はどこを向いているんだ?』みたいに、チーム全体を見渡すような感覚でやっていたと思います。個性はあってしかるべきですし、『歩調はバラバラでもいいけど、同じ方向は見ておけよ』と。ある意味では、それが西武の強さだとも思っていました。球団の方針やチームの目標を見失うなよということです」

