「資産5億円、お金があり過ぎたのかもしれません」…76歳社長夫人、潤沢な資産にも暗い顔。原因は、お屋敷の一部屋に住み続ける“跡取り息子”【CFPが解説】

「資産5億円、お金があり過ぎたのかもしれません」…76歳社長夫人、潤沢な資産にも暗い顔。原因は、お屋敷の一部屋に住み続ける“跡取り息子”【CFPが解説】

「きっと、もうすぐ良くなる」から流れた14年の歳月

自室へ閉じこもる日が続き、精神科にも通うようになった息子。「無理をさせたら長引いてしまうかもしれない。今は追い詰めないようにしないと」――そう両親が考えたのも当然でしょう。

食事の準備、必要なものの購入、年金・健康保険、果ては養育費の支払いまで、和代さん夫婦は康介さんの生活のすべての面倒を見ました。

療養を始めて半年ほど経つと、表情も徐々に明るくなり、家族との会話も増えていきました。和代さんは「そろそろ短時間でも働けるのでは」と期待しましたが、康介さんは「まだ自信がない」と首を縦に振りません。

そして――気づけば14年。康介さんは52歳です。仕事には戻れず、別の会社で再就職もしていません。生活費も当然、和代さん夫婦の負担です。

働かなくても衣食住に困ることはなく、親が生活を支え続ける日々。その姿を見ながら和代さんは、「家に財産があるからこそ、康介は焦って社会へ戻ろうと思えなくなってしまったのかもしれない」と考えるようになりました。

和代さんは時折、夫にこう漏らします。

「お金なんて、持っていないほうがよかったのかもしれないね……」

お金があることが「社会復帰」を遠ざけることも?

内閣府や総務省などの調査では、40〜64歳のいわゆる「中高年ひきこもり」は全国で推計100万人を超えるとされています(内閣府「生活状況に関する調査」等)。背景には、精神疾患、人間関係、離婚など、さまざまな事情があります。今回の康介さんも、会社での孤立と離婚という大きな出来事が重なり、心が折れてしまいました。

精神的に追い込まれた人にとって、まず必要なのは十分な休養です。無理に社会復帰を急がせることが、かえって症状を悪化させる場合もあります。一方で、体調が回復してきた後も何年にもわたって社会との接点を持たない状態が続くと、年齢を重ねるほど再び働き始めるハードルは高くなっていきます。

さらに、親に十分な資産がある場合、「生活に困らない」という安心感が、本人の社会復帰への意欲を失わせることもあります。資産があること自体が問題なのではありません。子どもが親のお金をあてにしてしまい、本人が自立する気持ちを失うことが問題なのです。

本来であれば、体調が回復してきた段階で、「今日は買い物をお願いする」「家事を分担する」といった家庭内での役割を少しずつ増やし、生活のリズムを整えながら、短時間の仕事やボランティア、就労支援など社会との接点を段階的に広げていくことが望ましかったといえます。

金銭面でも、自分に掛かる生活費分くらいは、しっかりと払ってもらうこと。回復が見られるのにできない場合、突き放して別居させるといったことも、時には必要かもしれません。突き放すことは「冷たいこと」とは違います。本人が再び自立して社会とつながるための、「きっかけ」をつくることにもなります。

あなたにおすすめ