
親の遺産を子どもが相続する場合、法定相続分によって兄弟姉妹間で均等に分けることが原則です。しかし、親との関わり方や関係性によっては「自分はこんなに親の面倒を見てきたのに、ほかの兄弟姉妹と同じ額しかもらえないなんておかしい」と不公平に感じることもあるでしょう。では、親の介護負担や経済的な負担がどちらか一方に偏っていた場合、遺産の配分は考慮されるのでしょうか。具体的な事例をもとに、寄与分や生前の相続対策について、相続トラブルに強い原田弁護士が解説します。
長女は父と長年疎遠、次女は父と同居して5年間介護生活
「実家は売って、お金は半分ずつ分ければいいでしょう」
父の和夫さん(仮名・82歳)の四十九日を終え、遺産分割について話し合うため、2人の姉妹は久しぶりに向かい合っていました。
姉の洋子さん(仮名・58歳)は、結婚後に県外で家庭を築き、和夫さんとは長年疎遠でした。さらに、和夫さんとの折り合いもあまり良くなく、和夫さんが亡くなる数年前からは実家に顔を出すこともほとんどありませんでした。
一方、妹の恵さん(仮名・53歳)は独身です。父である和夫さん名義の実家で和夫さんと暮らしながら会社勤めを続け、要介護1の認定を受けた和夫さんの生活を支えてきました。
介護保険を利用してホームヘルパーの支援は受けていましたが、仕事から帰宅すれば恵さんが和夫さんの食事の準備や身の回りの世話をし、通院の際は付き添うといった生活が5年間続いていました。
最低限の生活で切り詰めれば和夫さんの年金のみでやりくりできたかもしれませんが、お金は都度その場で必要になるもの。恵さんが自分の給与から2人分の生活費などを支出することもあったのです。
「親子なんだから当たり前」。そう自分に言い聞かせながら生活を続けてきた恵さんでしたが、その負担は決して小さなものではありませんでした。
父の介護をしてこなかった長女「遺産は2人で半分ずつ分ければいいわよね」
和夫さんは安らかに息を引き取りましたが、遺言書は残されていませんでした。相続財産は、恵さんが現在も暮らしている実家(土地・建物、評価額約2,800万円)と、預貯金約2,200万円が中心です。
相続人は、恵さんと洋子さんの2人だけでした。遺産分割の話し合いが始まると、洋子さんは当然のように口を開きます。
「相続人は私たち2人なんだから、半分ずつ分ければいいわよね」
その一言を聞いた恵さんは、思わず言葉を失いました。たしかに、母も亡き今、相続人は長女と次女の2人だけ。法定相続分はそれぞれ2分の1です。しかし、恵さんは仕事をしながら5年間も和夫さんの介護を続け、生活費まで負担してきたのです。
しばらく沈黙が流れたあと、恵さんは静かに、しかし抑えきれない感情を顕わにしながら口を開きました。
「私が何年お父さんの面倒を見てきたと思ってるの?」
