介護した人は、相続で多くの財産を受け取ることができるのか
恵さんの献身や苦労は、遺産の分け方には何も反映されないのでしょうか?
日本の相続法には、「寄与分」という制度があります。寄与分とは、共同相続人のうち、被相続人の財産の維持や増加について特別な貢献をした人がいた場合に、その人の相続分をプラス方向に変更させる制度です。
例えば、長年にわたり親の介護を続けてきた場合や、親の生活費を継続的に負担してきた場合には、この寄与分が問題となることがあります。
もっとも、「介護をしていた」「生活費を負担していた」という事情だけで、直ちに寄与分が認められるわけではありません。実際の訴訟や調停では、寄与分が認められるかどうかについて、比較的慎重な判断がされる傾向にあります。
「寄与分」という法律はあるが立証のハードルは決して低くない
では、寄与分が認められるためには、どのような条件が必要になるのでしょうか?
寄与分が認められるためには、単に親の介護をしていたというだけでは足りません。その介護や扶養が、親族として通常期待される範囲を超える「特別の寄与」と言えることが必要です。また、その貢献が精神的な支えになったということでは足りず、被相続人の財産が維持または増加した、つまり財産上の効果があったと言えることも必要です。
例えば、「家族の介護により施設への入所を避けることができた」「生活費を継続的に負担した結果、被相続人の財産の減少を抑えることができた」などの事情は、寄与分を認める方向に作用する事情になります。
しかし、要介護認定が1にとどまったという点や、父上の生活費を定期的に一定額支援したというよりも、年金では不足したときにたびたび補填していたといったような本件の事情は、特別の寄与を認めない方向に働く可能性があります。
このように、介護や扶養の必要性、貢献の内容や負担額、介護の期間などを、残っている資料をもとに総合的に考慮することで判断されます。そのため、恵さんのように5年間介護や扶養を続けていた場合であっても、寄与分が認められるとは簡単には言いきれないのが実情です。
