「100%保証」が銀行の審査機能を弱めた可能性
もう一つ興味深い結果は、民間金融機関によるコロナ融資の特徴です。
通常、銀行は貸し倒れリスクを負うため、信用力の低い企業への融資には慎重になります。しかし、コロナ禍で導入された実質無利子・無担保融資には信用保証協会による100%保証が付いていました。
企業が返済できなくなっても、銀行の損失は実質的に保証協会が負担します。そのため、銀行が本来果たすべき融資先の選別機能が弱まった可能性があると論文は指摘しています。実際、通常の融資と比較すると、信用スコアの低い企業ほどコロナ特例融資を受ける傾向がより強く表れていました。
研究では、「政府保証により銀行の貸出基準が緩和された結果、信用スコアが低い企業ほど民間銀行から譲渡性融資を多く受けている」と分析しています。危機時には迅速な資金供給が不可欠ですが、その一方で、公的保証が銀行の審査インセンティブを弱め、資源配分にゆがみを生じさせた可能性も否定できません。
「ゾンビ企業」と「ゾンビ予備軍」をどう考えるか
経済学では、「ゾンビ企業」とは、市場金利では資金調達できないにもかかわらず、金融機関や政府の支援によって存続している企業を指します。
今回の研究でより重要なのは、既存のゾンビ企業だけでなく、新たな「ゾンビ予備軍」が生まれる可能性に言及している点です。
分析では、コロナ融資全体の約19%が、TSRの信用スコアで「警戒が必要」とされる49点以下の企業に実行されていました。貸出額ベースでも約18%を占めています。これらの企業がすべてゾンビ企業だったわけではありません。
しかし、大規模な借入によって過剰な債務を抱えた結果、将来の設備投資や事業転換に必要な資金余力を失い、「デット・オーバーハング(過剰債務問題)」に陥る可能性があります。本来であれば成長できた企業まで、新たな投資ができず、長期的に競争力を失うリスクが生じることになります。
