◆スポーツ事業で成長を図るナガセ
学習塾大手は激しい再編を繰り返してきましたが、足元では一定の落ち着きを取り戻しています。四谷大塚や早稲田塾などを買収して業界トップクラスの規模に躍り出たナガセは、スポーツ事業の強化に注力。2024年12月に住友ゴム工業の傘下にあったダンロップスポーツウェルネスを取得しました。ナガセは2008年のイトマンスイミングスクールの買収によってスポーツ事業に進出。その後、2022年にブリヂストンスポーツアリーナを子会社化しました。2024年のM&Aによってスポーツ事業での拡大に意欲を見せる姿勢がより一層鮮明になりました。
同社の足元の業績は極めて堅調です。2026年3月期は16.2%の増収、22.9%もの営業増益を達成。ナガセのスポーツ事業はM&Aによって売上高が50.0%増加しました。買収による増収効果を除いても3%超の増収を維持しており、これは小中学生の学習塾事業の成長率を上回る数字です。
一方、スポーツ事業の利益率は3%程度にとどまり、20%に達する小中学生の塾事業には遠く及びません。これは施設の管理や設備投資に多額の費用が発生するためと考えられます。
しかし、会社全体として捉えればスポーツ事業の利益率の低さは本業の収益力を生かしてカバーが可能です。少子高齢化で子どもの数が長期的に減少するのは確実ななか、スポーツ事業がそれに代わる新たな成長促進剤となる可能性を秘めます。
ナガセのビジネスモデルは学習塾が抱える弱点を克服するものとなるのか、コングロマリット・ディスカウントで市場の評価を下げる要因となるのか。今後の注目ポイントと言えます。
◆AI活用で効率化を進める公文式
業界に大きな一石を投じたのが公文教育研究会です。7月5日に教育スタートアップatama plusを完全子会社化しました。atama plusは2017年4月創業。AIを活用して一人ひとりに合わせたカリキュラムを作成するAI教材「atama+」は全国4500教室に導入されています。また、「進学個別 atama+塾」のフランチャイズ展開も開始しており、教材の提供にとどまらず学習塾の展開にも注力していました。
atama plusは2024年4月に駿河台学園と資本業務提携を行い、駿河台学園が35.5%の株式を取得。公文による子会社化で資本関係は解消しましたが、提携関係自体は継続する見込みです。
公文はこれまで自前での成長にこだわってきましたが、AIが台頭するなかで効率的に教材を開発するスタートアップを傘下に収めました。教育の質と生産性の向上を同時に図る同社独自の取り組みだと見ることができます。
塾運営の効率化を目指すM&Aの動きは、今後さらに加速する可能性があります。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界

