◆問題の根底はカラスではなく「ルールを守らない人間」

ブルー網を新品で2倍の大きさのものにした。ブルー網のふちは鎖で、重しは大人でも重いと感じる鉄の棒。ふた付きの大型ゴミ箱の設置案も出たが、時間と費用がかかる。「手作業で、迅速に」という方針のもと、4〜5人の老人が総出で数時間の作業を終えた。
そして彼らはそこから1か月間、ゴミ収集車が来るまで見張りを続けたのである。
見張りを続けた老人たちが気づいたのは、さらに別の問題だった。
「そもそも、ブルー網の中にきちんとゴミを入れていない人間がいたんです。外国人の住民を含め、ルールを把握していない者も少なくなかったです。老人たちは警察のように取り締まりを行い、厳重注意を重ねました。分別できていない袋を持つ住民には、手取り足取り教えて……」
その結果、どうなったか。ゴミの量が減り、カラスは一切来なくなった。
カラスを追い払ったのは、重い鉄の棒でも、大きなブルー網でもない。最終的には、ゴミを出す人間の意識だったのだ。
◆地域社会を動かす原動力
事の顛末をこの地域にもともと住んでいる親戚に話した相良さんは、興味深いことを聞いた。ここの老人たちは、子どもたちの「元気な挨拶」がなによりも好きで、子どもたちへの愛が、迅速な対応への原動力なのだとか。「地域社会を動かすのは、制度や補助金よりも積み重ねてきた関係性と、子どもの無垢な愛嬌。これが自治会の老人たちには最も大事なのだなと感じた事件でした」
<取材・文/日刊SPA!編集部、藤山ムツキ>
【藤山ムツキ】
編集者・ライター・旅行作家。取材や執筆、原稿整理、コンビニへの買い出しから芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズほか多数。X(旧Twitter):@gold_gogogo

