◆誹謗中傷が「1日10件届く」
――現在、フェミニストインフルエンサーとして活動をしているのは、どのようなきっかけですか。マリン:40度近い高熱が3カ月くらいにわたって出たことがありました。それまで仕事もしていましたが、どうにも身体がしんどくて仕事に行けなくなってしまいました。もちろん地元の病院から大病院を紹介してもらい、そこで精密検査を受けることになりました。結果は、膠原病のシェーグレン症候群であるとのことでした。
これまで社会に対して思うことはあったし、SNSで発信することで自分の収入にもなるのであれば、身体にかかる負担が少なく生きていけると思って活動にシフトしました。博打のような選択でしたが、それまでの貯金があったので何とかなりました。
――一方で、いわゆるアンフェからの誹謗中傷もありそうですが。
マリン:1日に10件くらいは「死ね」と言われますね。あまりにも酷いものについては必ず開示請求をして法的責任を追及するようにしています。
――マリンさんの現在の問題意識はどのようなところにあるのでしょうか。
マリン:大きく分けて3つあります。性犯罪の厳罰化、男性のセルフケアの促進、アダルト動画の規制、です。
性犯罪は「いたずら」などと呼ばれて矮小化されることも多く、加害男性がその重大性に気づかないばかりか、女性も被害を申告しづらい風潮があります。社会全体で性犯罪に対して毅然とした対応をすることが求められると思います。
男性のセルフケアの促進は、「男が稼いで女が家を守る」という古い価値観からの脱却によって成り立つと考えています。奥様に先立たれた男性の孤立や孤独死が問題となっていますが、私は男性のセルフケアが進めば社会問題のほとんどは解決するように感じます。
アダルト動画については、同意のない性交を想起させる映像が出回っていることに強い危機感を覚えます。また近年では、AIで手持ちの写真から動画を生成する技術もあり、人権侵害になりかねないと考えています。
◆「男性嫌悪」は誤解である
――フェミニストを名乗るうえで、マリンさんがもっとも感じる社会とのギャップを教えてください。マリン:社会ではフェミニスト=男性嫌悪だと捉える人が一定数いますが、それは間違いです。フェミニストは、男女平等や公平、男女同権を目指しているだけなんです。しかしそこにも、「男性についてこられる女性は平等に扱う」という誤解があります。本来は、男女問わず弱者に合わせて達成されるものが平等であるべきだと考えます。
――“弱者男性”という言葉にみられるように、近年では男性のほうが弱いんじゃないかという声もありますが。
マリン:女性専用車両、女性専用プリクラ――など、女性優先を非難する声は強いですよね。しかし、「ラスボスを見てほしい」と私は言い続けています。女性専用が存在しなければならなかった根本の理由は何か? という視点が抜け落ちているように感じます。日常的に痴漢行為をされたり、ナンパ行為をされたりした結果として、女性専用のものができたのではないでしょうか。
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スマホ画面を飛び出して対峙したマリンさんは、極めて冷静で、落ち着いたトーンで話す。筆者がそのギャップに驚くと、「動画のテーマは、にこやかに話す内容ではないので、怒ったような印象を持たれるかもしれません」と少し微笑んだ。
複雑な生い立ちにくわえ、社会における平等性を考え続けたことが、現在の自立したマリンさんに繋がっているのだろう。誰もが権利を侵害されない世の中であってほしい――ただ”当たり前”を生きたいと願うひとりの女性の叫びにも似た祈りがそこにあった。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

