高市早苗首相は7月17日、皇族数確保策を盛り込んだ改正皇室典範の成立を受け、「幅広い賛同をいただき感謝申し上げる」と語った。だが、成立までの国会運営に手厳しい視線を向けるのが、皇室史研究家の倉山満氏だ。「高市首相の国会運営、稚拙なのだ。日本保守党と共産党を結束させる手腕、もはや才能ではないか」と、倉山氏は言い切る(以下、倉山氏による寄稿)。

◆「愛子天皇の可能性など最初からゼロ」
なんとか改正皇室典範が成立した。最後の局面で政府の法案立案能力に慄然としたが、まさか潰す訳にはいかない。“戦争目的”は達した。今ごろになって愚かなマスコミとSNSでは「なぜ愛子さまが天皇になれないのか」「男尊女卑の皇室典範」「万世一系の男系男子なんて噓だ。近代に作られた偽の伝統だ」などと、曲学阿世(きょくがくあせい)の御用言論人を総動員してプロパガンダを広めているが、何を言っているか意味不明である。そもそも、そんなのは陽動作戦。今回の戦いで「愛子天皇」を実現できると信じていたら、相当におめでたい。そもそも、愛子天皇の可能性など最初からゼロなのだから、本気にして踊った連中は滑稽なピエロだ。
しかし、敵の中にも利巧はいる。私は敵の黒幕の“戦争目的”は、「単なる一般人の男を皇族にすること」だと看過していた。それが実現した時点で国体の毀損なのだから、日本の歴史に一度も無い女系天皇は実現したも同じだ。その時点で少なくとも、今までの日本の歴史は何だったのかになる。
後はゆっくり嬲(なぶ)り者だ。愛子殿下をパンピーの男と結婚させ、そいつを皇族にする。子供も皇族。別に愛子天皇が実現しなくても、二人の子供が即位すれば、女系天皇になる。愛子殿下を利用して皇室を亡ぼそうとする陰謀だ。
これに対し、「皇室の話なのだから、アンケートや人気投票ではなく、先例に基づいて議論しよう」「パンピーの男を皇族にさせてはならない」と説いて回った人がいる。政界の多数は、常識論で落ち着いた。かくして陰謀は粉砕された。ざまあみろ!
◆最後は中道の賛成で立法府の総意が保たれた
最後は、中道が賛成に回ってくれた。これで立法府の総意が保たれた。立法府の総意とは、全会一致ではないが、主要政党の一致である。だから衆議院第二党の中道の役割は大きい。結果、衆議院では共産党以外に反対の政党は無かった。ただ、なぜ中道が賛成に回ってくれたのか、誰にも理解できない。ギリギリの局面で中道は妥協案を提示した。それに官邸がゼロ回答を寄こした。さすがに賛成の理由が無く、この党の尊皇派も一時は反対に回る覚悟をしたが、執行部が強引に賛成へ持っていった。小川淳也代表は苦しそうな表情だったし、階猛(しな・たけし)幹事長など泣き出さんばかりだった。
一方、極楽トンボだったのが、首相官邸の面々だ。中道は、与党の時に作った案に反対したくない公明党を抱えている以上、反対したくない。参議院第一党の立憲民主党も、国家の基本問題で意見が割れたら、中道・公明党の合流に暗雲が立ち込める。実は、高市首相が頭を下げれば、参議院でも立憲が賛成に回ってくれる芽が充分にあったのだ。ところが動かなかったどころか、挑発を繰り返した。
極めつきが、衆議院での小林鷹之自民党政調会長の質疑だ。「2600年以上の歴史を誇る」と言い切った。中身ではない。言い方だ。これを言われたら「神話を国会で議論する気か」と騒ぐ支持者を抱えている立憲は反対に回らざるを得ない(中道とて事情は同じだった)。日ごろから野党と話をしていないから、「NGワード」がわからないのだ。どうしても言いたいなら「公称2686年」と言えば良かった。これなら、宮内庁HPに「神武天皇の即位年は紀元前660年」と明記してあるので、何の問題も無い。
皇室の事もわかってないし、何よりも国会対策ができていない。

