◆良いことづくめの「ヤギがいる生活」

内田:家賃は月3万円です。光熱費は6,000〜7,000円くらいかな。焚き火でご飯を炊くので、電気代もあまりかからないんです。食費も野菜はほとんどご近所さんがくださるので、買うのは肉くらい。
たまに贅沢もするので食費は3万円くらい。それでも生活費は全部合わせて月7万円ほどで暮らせています。
――ご自宅ではヤギを飼われていますね。飼い始めたきっかけを教えてください。
内田:宮崎でもヤギを2匹飼っていました。農地の雑草を食べてもらうためです。雑草が生えっぱなしになっていると、除草剤を撒かれてしまうんですよ。私は除草剤が撒かれると、頭が割れるほど痛くなったり、発疹が出たりする。だから、撒かれる前にヤギに雑草を食べてもらっていたんです。
檜原村に来てからも、きれいな景色を作りたくて、「ヤギを飼いたいので耕作放棄地を貸してください」とお願いしたら、意外とすんなり貸していただけました。ヤギ小屋も宮大工さんにお願いして、伝統構法で建ててもらいました。
私が庭の草むしりをしなくても、ヤギが植木屋さん並みにいい仕事をしてくれる。おかげで景観もきれいになりましたし、ヤギを見ていると平和すぎて癒やされますね。
――現在も建築やインテリアのお仕事は続けているのでしょうか。
内田:もう以前のような仕事はできません。宮崎ではミシンを10台持っていましたけど、今はもうないですから。
ただ、伝統構法で天然素材の木材を使った家を建てたいという相談があれば、知り合いの宮大工さんをご紹介したりしています。趣味みたいなものですね。そうやって自然素材の家が少しでも増えたらいいなと思っています。
◆スモールハウスで村の活性化を目指す
――今、親御さんへのお気持ちは変わりましたか。内田:今となっては、会社を乗っ取られたことも、檜原村へ来るきっかけになりました。人生に無駄はないって言うでしょう。どんな経験にも意味があるんですよ。
親への恨みが消えたわけではないけれど、今はすっきりしました。縁が切れたことは、私にとっては良かったと思っています。
――今後、檜原村で実現したいことはありますか。
内田:私は、檜原村でも伝統構法で建てた自然素材のスモールハウスを広めていきたいんです。健康のために住みたい人もいるし、自分だけのプライベートスペースが欲しい人もいる。別荘として持つにも、それほどコストはかかりません。
実際、山梨県の小菅村では2017年から過疎対策としてタイニーハウスプロジェクトを始めています。私もそのコンテストで村長特別賞をいただきました。古民家を「あげます」と言われても、「広すぎて管理できない」と敬遠する人は多い。スモールハウスなら生活コストも維持費も抑えられるので、もっと気軽に移住できます。
檜原村の面積は森林が約95%を占めています。こんなに豊かな森林資源があるんだから、新建材ではなく、自然の木をそのまま生かした家づくりを伝えていきたいですね。
私が移住してきた頃は人口が2,000人でしたが、年々減っています。この自然を生かしたスモールハウスで移住する人が増えて、村がもっと元気になったらうれしいです。
――家づくりで大切なのは、どんなことだと思いますか。
内田:私は、家は最初から完成していなくていいと思っています。子どもが生まれたら一部屋増築して、子どもが巣立ったら、その部屋は撤去すればいい。暮らしに合わせて増改築していけばいいんです。
大きな家を建てても、子どもが独立したら広すぎて住みにくくなるでしょう。小さく始めて、その時々の暮らしに合わせて変えていく。私は、そんな家のほうが、ずっと自由で住みやすいと思っています。

【秋山志緒】
大阪府出身。外資系金融機関で広報業務に従事した後に、フリーのライター・編集者として独立。マネー分野を得意としながらも、ライフやエンタメなど幅広く執筆中。ファイナンシャルプランナー(AFP)。X(旧Twitter):@COstyle

