当然これには批判の声が集まりました。“山田氏ほどの人物ならば遺族が関係各所に根回ししていて、公表するまでは皆が黙っているのが暗黙のルールであるはず。それを無視して一番乗りで世間に知らせたいと思うのは汚い承認欲求だ”という意見に、多くの共感が寄せられています。
テレビ東京の篠原裕明記者も「公式な見解を待つのが適切」と見解を示し、立川志らく氏も先走って追悼文などを投稿した著名人について、「SNSを取り上げたほうがいい」と厳しく非難しました。
◆著名人の訃報は「SNS追悼合戦」に

もちろん、こうした行為は悪意によるものではありません。本当にショックで、思いがあふれて先走ってしまった可能性だって十分に考えられるからです。そうした事情を汲んで、これまでは訃報の扱いについて明確に明文化してこなかった経緯があります。
しかしながら、山田五郎氏へのフライング追悼への大きな反響は、この潮目を変えることになるのかもしれません。そこで、海外の先行事例から考えてみたいと思います。
◆海外に学ぶ「死者の尊厳」の守り方
2020年、バスケットボールのスーパースター、コービー・ブライアントがヘリコプター事故で亡くなったケースです。この時、アメリカのゴシップメディア『TMZ』は、警察が家族に正式に報告する前に、ブライアントの死亡をスクープしてしまったことが、大変な問題となりました。ロサンゼルス市警が『TMZ』の行動を、「まったく不適切で無神経だ」と断じたことで、世界中から猛批判を受けることとなったのです。そして、これが行政を動かすきっかけとなりました。2020年9月にカリフォルニア州は「コービー・ブライアント法」なる法律を制定したのです。これは、警察官や消防士など、事件や事故の現場で対応する人間が犠牲者の遺体写真などを無断で撮影したりSNSで共有したりすることなどを禁じるものです。
これは、現場の人間がSNSでの拡散や個人的な関心のために死者の尊厳を踏みにじる行為を防ぐための、行政側の明確な歯止めとして機能しています。山田氏のケースとは多少事情は異なりますが、「死者をSNS上のコンテンツとして扱わない」という発想には共通点があります。

