「中国なら10倍売れますね」とはやす日本の老舗化粧品メーカー…在日中国人ネットワークに群がる、美容ビジネス「暗黙の抜け道」

「中国なら10倍売れますね」とはやす日本の老舗化粧品メーカー…在日中国人ネットワークに群がる、美容ビジネス「暗黙の抜け道」

都内のオフィスビルの一角…中国人だらけの無料セミナーの実態

2〜3カ月に1度行われる説明会の対象者は、「同社製品の未使用者、同社のビジネスに興味がある人」だ。紹介者がいれば誰でも無料で参加でき、4000〜5000円相当の化粧品までもらえる。

ある平日の朝、都内のオフィスビルにある貸会議室のような会場に王さんと到着すると、入口で名前を記入するようにいわれた。身分証明書の提示や、連絡先などを記入する必要はなく、そこで商品を購入するという条件もない。フランクな感じだ。

会場では、新商品のサンプルが前方のテーブルにきれいに並べられ、大きいスクリーンにはプレゼン画面の1ページ目が映し出されていた。午前10時半から約2時間の予定で説明会が始まった。

会場全体を見渡してみると、参加者は30人前後といったところ。王さんに聞くと「50人くらいになることもある」という。30〜40代の中国人女性が多く、50代くらいの中国人男性も数人いた。ほかにベトナム人かフィリピン人らしき人も3〜4人。私以外の日本人は見当たらなかった。

司会は本社からやってきた日本人社員。会社の歴史の説明や化粧品に関するクイズなどに続き、同社の化粧品の特徴、効果の紹介があった。説明は日本語だったが、スクリーンの表示は中国語と英語があり、途中から、会場にいた中国人女性が逐次通訳を自ら買って出た。

会場にいる大半は中国人だったので、日本人社員の説明より、中国語の説明のほうが盛り上がる。中国語の説明を聞くたびに、感心して大きくうなずく人、スクリーンを見ながら隣と小声で語り合う人などが目に入った。

途中で新商品の感触を確かめるデモンストレーションが行われ、2〜3人1組で体験してみた。私のグループには30代前半くらいの中国人女性がいた。話しかけてみると、ふだんはネイルサロンの仕事をしているが、化粧品の販売も仕事にしたいと思い、初参加したそうだ。

同社のヒット商品である5万円の美顔器も紹介された。「4カ月で4万台売れた」という説明のあと、「もしこれを中国で販売したら、日本の10倍は売れますね」と司会者がいうと、参加者からどっと歓声が上がった。

日本の会社の商品だが…売る人・買う人、どちらも中国人

説明会のあと、再び王さんに話を聞いた。同社では売り上げに応じて、下からエステティシャン、ビューティーコンサルタント、その上がグループリーダーという名称になってランクが上がっていく。

グループリーダーの月間の売上高は約80万円で、さらに上のマネジャークラスになると、500万円になる。3カ月に1回評価があり、売上高によってランクが上がっていく仕組みだ。上がれば上がった分だけインセンティブがある。

販売方法は、たとえば商品を600円で仕入れて、定価の1000円で販売する人が多いが、王さんの場合、定価1000円の商品を仕入値の600円で販売している。そこでは利益は出ないが、1カ月分の売上げの10%がバックされる仕組みなので損はしない。王さんは自分の判断で顧客に安く提供しているのだ。

会社全体の売上げのうち、どの程度が中国人の販売によるものかは不明だが、「日本の会社ですけど、いまでは中国人の存在がとても大きくなっていると思います。相当売上げに貢献しているはず」と話す。

現在、化粧品を売る人、買う人のどちらも中国人というケースが激増している。しかも、王さんやその友人の対象顧客のほとんどは日本国外、つまり中国に住む中国人だ。

王さんは来日して10年以上が経ち、日本でも友人が増えたが、現在も中国にはさらに多くの友人がいるので、現地向けに販売するほうが自然だし、やりやすいという。

そんな王さんをサポートしているのは中国に住む両親だ。父親は趣味の集まりに行く際、娘が扱う商品をさりげなく友人に紹介している。「王さんの娘さんの商売なら安心だ」「日本のナットウキナーゼや青汁を飲んで健康になりたい」と健康食品をよく購入してくれる。

家族のサポートもあって、王さんはぐんぐん販売ランクを上げている。

中島 恵

ジャーナリスト

提供元

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