
◆世帯年収2000万超でも家計は火の車
新田孝弘さん(仮名・44才)は、外資系IT企業の管理職。共働きの妻と合わせた世帯年収は2000万円を超え、住まいは5年前にペアローンで手に入れたタワマンだ。しかし、この勝ち組生活は子供2人の教育費で一変したという。「中2の長女を、3週間のカナダ短期留学に送り出しました。航空券まで入れると100万円超え。それに加えて、小6の長男が今年中学受験。夏期講習と志望校特訓で大手塾に40万円弱、春の模試で判定が下がったため15万円の個別指導も泣く泣く追加しました。夏休みの教育費だけで、ゆうに150万円を超える計算になります」
すべては我が子の将来のため。しかし、こんなパワーカップルでも家計は火の車だ。
「手取りは月100万円ほどですが、ローン返済と管理費で38万円、生活費や塾の月謝で40万円が消えて自由になるのは20万円ほど。臨時で増えた出費を賄うのがきつく、長女の留学費用は親に全額工面してもらいました。これだけ注ぎ込んで、塾に言われたのは『ご長男の偏差値帯だと、狙えてMARCHの附属。それも安全圏ではありません』。受かってくれないと、さすがに心が折れそうです」
追い打ちをかけるのが、住環境だ。
「タワマンといっても2LDK。中2と小6に個室はなく、リビングは問題集とプリントの山です。洗濯物は畳む間もなく積み上がり、家じゅうがいつも殺気立っている。最近、ふと考えるんです。これなら郊外の3LDKや4LDKに住み、公立の学校に行かせたほうがよっぽど人間らしい暮らしなんじゃないかって」
◆家族旅行まで”受験のネタ作り”にする
一方、”教育熱”そのものに家庭が茹だっている街もある。文京区の中古マンションに住む高橋恵さん(仮名・42才)は食品メーカーの広報職。機械メーカー勤務の夫と合わせた世帯年収は1300万円だという。名門学区を求めて3年前に越してきた、いわゆる”教育移住”組だ。「この街は小6の半分が中学受験をするといわれていて、私立・国立中への進学率は23区トップの約5割。子どもは周りの環境が大事だと思って引っ越してきました。親同士のつながりも活発で、中学受験に挑む環境としては最適だと思います」
長男の夏は、夏期講習と特訓でほぼ塾に埋まる。唯一の家族旅行も「受験のため」と高橋さんは話す。
「家族旅行は、願書や作文で使う『体験のネタ作り』です。行き先は塾の先生に相談して長崎に決めました。グラバー園と出島を回れば、6年生の歴史で頻出の鎖国から明治維新までを体験できて、『家族での学び』として使えるからです。ただ、私も息子も振り返りシートやメモを取るのに必死で、旅行を楽しむのは二の次になってしまった。家路につく飛行機の中で眠る息子を見ながら、ふと何やってるんだろうって思ってしまいました」
夏の出費は夏期講習に特訓、体験プログラムを合わせて40万円超。だが、恐ろしいのはカネではないという。
「気づけば夫婦の会話は長男の勉強のことばかり。今年に入って、塾選びで夫と3回喧嘩しました。どれだけやっても長男の成績はなかなか上がらないし、お互いフラストレーションが溜まっていたんだと思います。しかも、夏休みくらいもっと遊びたいという長男に『合格したらいくらでも遊べるでしょ』ときつく当たってしまって……。もう限界かもしれません」

