ドイツ国家認定資格・マイスターである嶋野シェフのリジェネラティブなパンづくり【ひととわ】(千葉県・木更津市)

ドイツ国家認定資格・マイスターである嶋野シェフのリジェネラティブなパンづくり【ひととわ】(千葉県・木更津市)

「リジェネラティブ・ベーカリー」シリーズvol.27

『環境再生型農業』を応援するパン作りをしているベーカリーを紹介するシリーズ。

千葉県木更津市、JR木更津駅から徒歩8分の住宅街の一角にある「ひととわ」さん。
国産有機小麦100%の全粒粉パンや国産ライ麦を使用したパンが10~12種類ほど並びます。

ドイツでマイスター資格を取得した嶋野貴文シェフ

高校時代、進路を考えていたときに母親から「小さい頃はお菓子屋になりたいと言っていた」と聞かされたことがきっかけで試しにパンを作ってみると、不思議なくらいうまく焼けたことがパン職人への第一歩となりました。

製パン専門学校卒業と同時にドイツへ渡り、現地で職人資格「ゲゼレ」を取得。
一度帰国し、国産小麦を使用し自家製酵母でパンを焼く「マイスターズバックシュトゥーベ カキヌマ」(名古屋市)で経験を積んだ後、再びドイツへ。計5年の修業を経て国家資格であるマイスターを取得しました。

修業先は、フランクフルト近郊にあるバイオダイナミック農法を実践するオーガニック農場に併設されたパン工房。農場で育てた穀物をパンにするなど循環型の環境の中で働くうちに環境保護の観点からオーガニックについて学ぶようになりました。

「日本にいた頃はオーガニックというものをほとんど知りませんでした」
ドイツでは、フランクフルトからわざわざパンを買いに来る人がいるほど、オーガニックへの意識は高いのだそう。
特に印象に残っているのが、バイオダイナミック農法の考え方でした。
月や惑星の動きを農作業に取り入れるという考え方に「正直、初めはオカルトみたいだなと思いました」と少し笑いながらおっしゃった嶋野シェフ。しかし、月の満ち欠けが潮の満ち引きに影響するように、天体が地球へ与える作用を農業に生かすという考え方を聞き、「なるほど」と腑に落ちたのだそう。

創業以来使い続けているのは、北海道「アグリシステム」のオーガニック小麦です。開業前に見学に行った広島「ドリアン」で、偶然訪れていたアグリシステムの伊藤社長を紹介されたことがきっかけでした。もともと使いたいと思っていた小麦でしたが、実際に話を聞き、「未来の子どもたちへ、よりよい環境をつないでいきたい」という理念に深く共感しました。
その考え方は嶋野シェフがドイツで培った価値観とも重なっていました。

「自然環境をいい状態で次の世代へ渡したい」という想いがあるからこそ、原料選びは品質だけでなく、未来への責任でもあると考えています。

現在は「オーガニックゆめちから」や「オーガニックスム・レラT70」などのオーガニック小麦に加え、玄麦で仕入れた小麦とライ麦を自ら製粉しています。オーガニックにこだわるのは、全粒粉で丸ごと食べることで廃棄量を減らし、栄養も余すことなく生かせるから。
体にも環境にもやさしいパン作りを続けています。

一般的なイメージのドイツパンとは少し違うしっとり水分を感じるパン達

パン作りにもドイツで培った経験が生きています。
ドイツパンと聞くと、重くパサパサした食感を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし嶋野シェフのパンは違います。
湯種にルヴァン種を加えて元種を作り、水分をたっぷり抱え込ませることで、しっとりもちっとした食感に焼き上げています。

◆全粒パン(写真左)
大きく焼いたパンの外側にも全粒粉がたっぷり。
焼き固めたパンとは全く異なり、空気を含んで溶けるような優しい食感のクラスト。
しっとりふんわり、むちっとしたクラムからは、穏やかな酸味のあとに全粒粉による穀物の甘みがじんわり広がります。
アグリシステムの小麦玄麦を自家製粉して使用。

◆ライ100(写真右)
トマトを思わせる爽やかな酸味、噛むほどに出汁のような旨みが広がります。
青々としたローズのようなライ麦の香りに酔いしれながら口にすると、酸味と甘みが交互に現れます。
指にぴたっと吸い付くほどのみずみずしい生地です。
アグリシステムの北海道十勝産有機栽培ライ麦を玄麦で仕入れて自家製粉したものと、ドイツ産のライ麦を半量ずつ使用。

◆バゲット
「あれ?これバゲットだよね?」と疑ってしまうほど、ふんわりソフトなクラスト。
強めの焼きの香ばしさとクラムの甘さのバランスは、まるで焼き団子を食べているかのような美味しさ。

◆全粒パン(いちじく)
生地のふんわり加減と一体化しているかのようなやわらかないちじくは甘さが控えめなので、肉料理やワインと合わせるなど多彩に楽しめる。

◆ブレッツェル
小麦全粒粉とライ麦全粒粉を配合し、ルヴァン種で発酵しているので穀物の旨みがより感じられます。
ラウゲン液の風味は控えめで、細い部分をポキッと折って口に入れると、健康的なスナック菓子のよう。

配信元: パンめぐ

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