「下の世話もしたのよ!?」姉の使い込みが発覚、弟の老後計画は崩壊
「どういうことだ!? 母さんのお金はどこ?」
カズヒトさんが問い詰めると、ミツルさんは泣き崩れました。実は母が施設に入所し、直接の介護から少し手が離れたころから、姉は母のキャッシュカードを使ってお金を引き出していたのです。
長年の介護で溜まったストレスを発散するため、最初は美味しいランチを食べる程度だったのが、次第に高級エステやブランド品の購入、さらにはホストクラブにまで通い詰め、歯止めが利かなくなっていたのです。
「あんたはお金だけ出して、私は下の世話も全部やって大変だったんだから! これくらいしたっていいじゃない!」
泣き叫ぶミツルさんの言葉に、カズヒトさんは言葉を失いました。カズヒトさん自身も、自分の家庭の生活費を切り詰めてまで仕送りを続けていました。
いつか実家を整理して、お互い穏やかな老後を迎えようと密かに思い描いていた計画は、崩れ去りました。
信頼していた実の姉に老後資金を奪われ、カズヒトさんは今、弁護士を通じて使い込み分の返還請求をするべきか、絶望のなかで悩み続けています。
【弁護士が解説】使い込まれた遺産は取り戻せるのか?家族の信頼を守る防衛策
本件のようなケースでは、親の預金を無断で自己のために使い込んでいた場合、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求などが問題となります。ただし、法的に請求できることと、実際に回収できることは別問題です。
使い込まれたお金が既に浪費され、相手方に十分な資産がなければ、判決を得ても現実には回収できないケースも少なくありません。そのため、実務では残された不動産など他の遺産がある場合には、その取得割合を調整することで実質的な公平を図ることも検討されます。
もっとも、ミツルさんの行為は決して正当化されるものではありません。一方で、高齢の親の財産管理を一人の家族に任せきりにしてしまうことにもリスクがあります。
たとえば、お正月やお盆など家族が集まる機会に通帳や取引履歴を一緒に確認したり、介護やお金の管理状況を定期的に話し合ったりしていれば、使い込みを早期に発見し、被害の拡大を防げた可能性もあります。
介護では「任せること」も必要ですが、「任せきり」にしないことも同じくらい重要です。家族全員が適度に関わり、財産管理を見守る仕組みを作ることが、大切な財産だけでなく家族の信頼関係を守ることにもつながるでしょう。
山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士
