◆“制約”がある中で各社が工夫をこらす「家系カップ麺」
カップ麺の家系は、実店舗の何を再現しようとしている傾向にあるのか……。家系ラーメンに詳しいフードアナリストの中山秀明氏は、「誰もが想像する家系の特徴を6つ挙げるとすれば、①豚骨醤油(実際には鶏ガラも使います)、②鶏油、③酒井製麺の太くて短い低加水のストレート中太麺、④デカめの海苔(基本は3枚)、⑤ほうれん草、⑥燻製チャーシュー。メーカーさんは、この6つを意識して再現を試みていると思います」と語る。
コストとの兼ね合いもあるため、海苔がない家系カップ麺もあることに触れつつ、「ちなみに酒井製麺特有の短い麺や、燻製チャーシューをリアルに再現した家系カップ麺は、僕の知る限りではありません」とのこと。カップ麺で再現できる限界はあるが、その“制約”の中でどれだけ工夫できるかが鍵なのだとか。
中山氏はメーカーごとの違いについても教えてくれた。
「スープ、麺、トッピングのすべてに違いは出ます。わかりやすい例を挙げると、やはり日清食品はトータルで強い。長い社歴もさることながら、手がけてきた商品が多く、コンビニや専門店と切磋琢磨してきた経験も豊富で、麺以外の食品も手がけるなど知見に富み、そもそもチャレンジングな社風ですし、明星食品はグループ会社。枚挙にいとまはなく、味づくりに長けているのはある種、当然といえるでしょう。
一方、他社にも強みをもつ分野があります。たとえば、ヤマダイの『凄麺』はノンフライ麵としては非常に高いレベルですし、エースコックは『スーパーカップ』のような食べごたえのある商品を作るのは得意。こうしたバックボーンを踏まえた開発力が、商品化された味にもにじみ出ると思います」(中山氏)
特に、名店コラボ商品と通常の家系商品では、“名店の味チェックが入るかどうか”が大きな違いだと話す。
「ゼロから名店が携わるケースもあるかもしれませんが、基本はメーカーが再現した試作品を店主などが味見して改善を繰り返す方法のはず。そこには、もちろん原価や仕様の制限もあると思います。たとえば、店主が希望しても容器の形状を縦型から横型に変更したり、粉末スープから液体のエキスタイプに変更したりすることが難しい場合もあります」
一方で通常の家系商品はメーカーのみで開発するため、“店主のこだわり”的な個性は出しにくいと指摘する。
「とはいえメーカーさんもプロですから、店主の監修なしのほうが万人受けする味に仕上がり、売れ行きはよかった、みたいなこともあるかもしれません」(中山氏)
王道の味があるようで、実は細かな違いと好みも千差万別の家系ラーメン。特にカップ麺ともなれば、「この味と食感が正解」はないのかもしれない。各メーカーの工夫・企業努力が凝縮されているわけだが、自分の好みのタイプを見つけることができればラッキーだ。
<取材・文・撮影/松本果歩>
【松本果歩】
インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。X(旧Twitter):@KA_HO_MA

