大学院生だった20代前半、一人暮らしをしていた上條美月さん(仮名)は、今でも忘れられないという出来事を経験した。それは、ある朝、玄関のドアがなぜか開かなくなったことから始まった。
◆玄関のドアがなぜか開かない

「力を入れて押してみても、ドアは数センチしか動かず、怪訝に思いました」
数センチの隙間からのぞき込んだ瞬間、上條さんは背筋が凍るのを感じた。
「そこには人の足が見えたんです。しかも一人ではなく、共用廊下には、酔いつぶれた男たちが折り重なるように倒れていたんです」
静かな朝の廊下に彼らのいびきが響く。そのうちの一人が、上條さんの玄関ドアにもたれかかるように眠っていたため、ドアが開かなかったのである。この状況では、部屋から一歩も外へ出ることはできなかった。
◆前夜から始まっていた異変
この異様な事態は、実は前夜から始まっていたという。当時上條さんが住んでいたマンションは、1フロアに3部屋しかない小さな建物だった。1部屋は空室で、居住者は上條さんと向かいの部屋の男性だけだった。「向かいに住む20代後半くらいの男性はバンド活動をしているらしく、毎晩のように友人を集めていました。夜になると楽器の音や歌声、大声での会話が始まり、部屋はまるで居酒屋のような騒ぎになっていましたね」
事件の前夜、深夜0時頃、その騒ぎは過去最悪のものとなる。総勢15人ほどが集まり、部屋だけでは収まらず、狭い共用廊下まで使って宴会を始めたのだ。笑い声、叫び声、歌声が響き渡り、酔った勢いで上條さんの部屋のドアにも何度もぶつかってきた。
さすがに耐えられなくなった上條さんは、震えながら警察へ通報した。警察が到着するまでの数分間は、恐怖のあまり何十分にも感じられたという。警察の介入で一度は静かになったものの、それも束の間だった。深夜3時頃になると、また宴会が再開された。
翌朝は大学で大事な実験がある。「お願いだから静かになって……」と願いながら耳栓をして横になり、何とか眠りについた。朝6時頃にはようやく静かになり、「みんな帰ったんだ」と安心した。しかし、それは大きな間違いだった。
「彼らは帰ったのではなく、共用廊下で酔いつぶれて眠っていただけだったんです」

