◆■ 数字で見る「満員電車のマナー問題」

冒頭で触れた日本民営鉄道協会の「2025年度 駅と電車内の迷惑行為ランキング」(回答総数5,202名)では、4位に「扉付近での滞留」がランクイン。沢橋さんが立たされた「一番混み合うドア前のエリア」は、まさに多くの人が“もっとも迷惑を感じる場所”でもあったわけです。混雑時のドア付近の滞留は、それだけ多くの利用者のストレスの温床になっているのでしょう。
混雑シーンにまつわる項目は、他にも軒並み前年から上昇しています。
・扉付近での滞留:27.6%(新設で初登場4位)
・乗降時のマナー(駆け込み乗車、乗車列への割り込み等):全体で20.0%(8位)
・「乗降時のマナー」と回答した人のうち、「乗車列に割り込む」を挙げた人は前年4.5%→18.9%、「駆け込み乗車」は前年5.5%→18.2%と、いずれも大幅に上昇
・スマートフォン等の使い方は前年9位から5位へ浮上(13.4%→21.6%)
・「スマートフォン等の使い方」と回答した人のうち、「混雑した車内での使用」を挙げた人は前年22.7%→28.4%に
また、「駅や電車内のマナーは以前にくらべて改善されたと思うか」という問いに対しては、「変わらない」と答えた人が39.2%、「悪化した/やや悪化した」と答えた人が合わせて42.5%。改善を実感している人(合計18.4%)を大きく上回りました。多くの利用者が、車内マナーは“良くなっていない”と感じているわけです。
混雑は、物理的に人と人との距離を奪い、同時に心の余裕も奪っていきます。それでも、杖を振るうことが許されるはずはありません。今回のエピソードで声を上げた男性のように、誰か一人が動くことで空気が変わる瞬間もある——。ドア前のわずかな空間で、私たちに取れる行動は、案外まだ残されているのかもしれません。

【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め

