「私、実家には戻らない」年商20億円の52歳創業社長が25歳娘に初めて手を上げた日。絶縁から7年…会社を売却し、娘からの〈結婚事後報告〉にも笑顔になれたワケ

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「本気でいってるのか?」…思わず手が出た父

食卓は一転、重たい空気に。「本気でいってるのか?」と阿部社長は、確認しました。

「なんのために育ててきたと思ってるんだ」。気づけば、そんな言葉がこぼれていました。恵理さんも負けじといいかえます。

「……私のことなんだと思ってるの? 私はお父さんの会社のために生まれてきたんじゃない!」

その瞬間でした。阿部社長の手が、恵理さんの頬を打ちました。妻が慌てて2人のあいだに入ります。

「もういい」。そのまま、恵理さんは家を出ていってしまいました。

後継者は“空席”のまま、迫る「決断のとき」

恵理さんが家を出てから、半年が過ぎました。何度連絡しても、返事が来ることはありません。

会社ではなにごともないように振る舞っていましたが、現実は待ってくれません。阿部社長は59歳になり、取引先や金融機関から後継者を尋ねる声が増えていきます。

「阿部社長、後継者の件は順調でしょうか」「社長。私もあと何年かで引退します。その前に、次の社長の顔だけは見届けたいと思っていまして」

そのたびに、言葉を濁すしかありません。「誰が継ぐのか」「この会社をどうするのか」という答えを示せないことが、阿部社長自身だけでなく会社のリスクになりはじめていたのです。

ある夜、阿部社長は一人、人気のない工場を歩いていました。若いころから人生を懸けて守ってきた場所です。そこでふと、恵理さんの言葉が頭をよぎりました。

「私はお父さんの会社のために生まれてきたんじゃない」

あのときは、娘に会社を侮辱されたように感じました。しかし、いまは違います。

「社員を守る方法は、本当に親族承継しかないのか?」。そう、初めて自分自身に問い掛けました。

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