西野愛梨さん(仮名・29歳)は、その日のことをこう振り返る。

◆終電後のタクシー乗り場は長蛇の列
「散々な1日でした。金曜日で、ただでさえ一週間の疲れが溜まっていたなか、仕事中に理不尽に怒られ、さらには社長の思いつきで急遽、全員参加の飲み会が開かれて……。社長の自慢話とお説教をひたすら聞かされた挙句、解放されたのは深夜0時過ぎでした」自宅の最寄り駅までの終電はすでになく、西野さんが飛び乗れたのは途中駅止まりの最終電車だった。
「飲みすぎたせいで吐き気がある状態で満員電車に揺られて……終着駅に着いた時にはへとへとでした。それで、ホームのベンチで少し休んでいたんですけど、駅員さんに『もう閉めるので』って追い出されて。仕方なくタクシー乗り場に向かいました」
だが、乗り場には長蛇の列ができていた。西野さんは列の最後尾に並び、その後ろに中年男性がひとり続いた。うだるような暑さの熱帯夜のなか1時間近く待って、ようやく順番が近づいたときだった。
◆派手な男女が強引に割り込む
「どこからともなく、派手なブランド物を着た若い男女のカップルがふらっと現れて、悪びれもせず列の先頭に割り込んで来たんです。普段なら躊躇したと思いますが、その時は疲れていたこともあって、つい『いや、並んでますけど』と注意していました」だが、カップルは西野さんを一瞥しただけで無視。それどころか、当然のような顔で先頭に居座り続けた。
「こんなチビ女には何もできないだろうと思われたんだと思います。イラッときて、もう一回『すいません。並んでます』と言ったんですが、男の方に『ああ? こっちも並んでただろ』って、ありえないことを言われて……後ろの中年男性に目で助けを求めたんですが、見て見ぬふりでした」
カップルの悪質な態度に、頭に血が上ったものの、どうにもならなかった。
「甘い物で気持ちを落ち着かせようと思って、肩にかけていたトートバッグに手を突っ込んで、飴を探すことにしたんです。でも、バッグの中は物が多くてなかなか見つからず……カップルの背中を睨みながら探していた時でした」

