エコノミークラスは「狭い」「窮屈」というイメージばかり語られるが、多くの利用者にとって本当に深刻なのは「まともに眠れない」ことではないだろうか。その課題に対する新しい提案として登場したのが、エミレーツ航空が導入を始めた新型ヘッドレスト「U-Dream」だ。

◆なぜ、エコノミー席は長年「眠れないまま」だったのか
実は、エコノミークラスのシートは突然進化したわけではない。U-Dreamを開発したサフラン・シートは、航空機用シートを長年手がけてきた大手メーカーだ。だが、航空会社がエコノミー席に求めてきたのは、長らく「快適に眠れること」よりも、「軽く、丈夫で、多くの座席を搭載できること」だった。
燃料費を抑え、一人でも多くの乗客を運ぶことが優先され、快適性への投資は限られていた。
しかし航空会社同士の競争が激化すると、「軽量化」に加え「快適性」が重要な差別化要素となる。2000年代以降には、高さだけでなく左右へ折り曲げられるサイドウイングを備えた可動式ヘッドレストが普及し始めた。頭を安定して支えることで、長距離フライトの疲労を軽減する工夫が各社で進められたのである。
現在では、多方向に調整できるヘッドレストはフルサービスキャリアでは珍しくない装備となった。しかし、その役割はあくまで「頭を支えること」にとどまっていた。
◆「ネックピローを座席に付けた」という逆転の発想

従来の可動式ヘッドレストは「頭を支える」ことを目的としていたのに対し、U-Dreamは「快適に眠ること」を目的として設計された。
左右の大型サイドウイングが頭と首を包み込むように固定し、上下や角度も細かく調整できるため、睡眠中に頭が前へ倒れたり左右へ揺れたりするのを防ぐ。まさに、多くの旅行者が持参していたネックピローを最初から座席へ組み込んだような発想である。
航空機用シートである以上、安全基準を満たす必要もある。大型のサイドウイングを備えながら、離着陸時や緊急時の安全性も確保した点が、この製品のポイントだ。
これは単なるヘッドレストの改良ではない。「頭を支える装置」から「睡眠をサポートする装置」への進化と言ってよいだろう。

