◆市販のネックピローと何が違う? 日本でも乗れる?

U-Dreamは、それらを座席側で解決しようという発想だ。しかも追加料金は不要である。このヘッドレストは通常のエコノミークラス設備として搭載されるため、プレミアムエコノミークラスのような上級クラスの設定にはなっていない。
現在はA350への搭載が始まっており、今後導入されるボーイング777X全機にも標準装備される予定だ。さらに既存のA380や777にも改修時に順次搭載される。
エミレーツ航空は成田、羽田、関西へA380や777を運航しているため、改修が進めば日本発着便でも体験できる可能性は高い。
もちろん万能ではない。シートピッチや座席幅が広がるわけではなく、足元の窮屈さや隣席との距離は従来のままだ。それでも、長距離フライト最大のストレスである「眠れない」という問題に焦点を当てた点は高く評価できる。
◆エコノミー席の快適さも航空会社選びの材料になる

しかし実際に飛行機へ乗る人の大半はエコノミークラス利用者だ。ナローボディ機では全座席の約9割、787や777、A350などのワイドボディ機でも約6~7割前後をエコノミークラスが占めている。航空会社にとって評価が出やすく、本当の「顔」となるのはエコノミークラスなのである。
それにもかかわらず、「狭くて眠れないのは仕方ない」という状況が長年続いてきた。
今回のU-Dreamは、その常識を変える可能性を秘めている。そして開発したサフラン・シートは、世界中の航空会社へシートを供給するトップメーカーだ。同社が提案した新しい睡眠コンセプトが他社へ広がれば、「ネックピローを持って飛行機へ乗る」という習慣そのものが過去のものになるかもしれない。
航空会社の競争は、多くの乗客が利用するエコノミークラスで、どれだけ快適に眠れるかになりそうだ。
長距離フライトのエコノミークラスで眠れない――。多くの乗客が長年あきらめてきた不満に、航空会社がようやく手を付け始めた。U-Dreamが本当に“神シート”になるかは、実際の路線でどれだけ普及し、どれだけ快適に眠れるかにかかっている。
<文/北島幸司>
【北島幸司】
航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。YouTube チャンネル「そらオヤジ組」のほか、ブログ「Avian Wing」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。Facebook avian.wing instagram@kitajimaavianwing

