
かつて「将来性抜群の街」として売り出された郊外ニュータウン。当時20代だった男性は「ここしかない」と一戸建てを購入しました。しかし30年が経ち、街からは人影が消え、行政サービスすら縮小される「ゴーストタウン」へと豹変。「売るに売れず、住み続けるのも地獄」――男性が突きつけられた、郊外不動産の“残酷な現実”とは?
29歳で踏み切った「夢のマイホーム購入」
「当時のあの賑わいを知っている人間からすれば、今の状況は悪夢としか思えませんよ……」
そう語るのは、現在59歳の雅之さん(仮名)。地方の物流関連企業に勤める会社員で、現在の年収は約580万円です。
今から30年前、いい環境で子育てがしたいと、当時大々的に開発が進んでいた郊外のニュータウンに土地付き一戸建てを購入しました。当時の年収は430万円。専業主婦の妻(当時27歳)と、生まれたばかりの長男の3人家族でした。
購入価格は建物と土地を合わせて約3,800万円。頭金として600万円を用意し、残りの3,200万円を35年ローンで組むことに。毎月の返済額は約11.5万円。当時の雅之さんの手取りからすると楽な金額ではありませんでしたが、「これから収入が上がる」「子どもがある程度育ったら妻も働く」と考えてのことでした。
購入の決め手となったのは街の勢いです。行政主導で開発されたそのエリアは、綺麗に区画整理され、駅前にはスーパーや有名チェーン店が立ち並び始めたところでした。近くに駅がないのはネックでしたが、車さえあれば問題はなく、さらに「将来的に新路線が延伸される」という噂も囁かれていたのです。
「いいタイミングで家を買えて良かった。同世代の住人も多く、子どもを育てるには最高の環境だと、当時は思っていました(雅之さん)」
しかし、その栄華は長続きしませんでした。
人が消え、シャッターが降り…街は「限界ゴーストタウン」へ
2000年代以降、景気の低迷とともに駅前の核となっていたショッピングセンターが撤退。追い打ちをかけるように、期待されていた鉄道の延伸計画は正式に凍結されました。
さらに、近隣の隣接市に別のアウトレットモールやアクセスの良いタワーマンション群が完成すると、街の人口流入は暗転。30年が経過した現在、街の風景は一変していました。
駅前の商店街の多くがシャッターを下ろし、街灯の夜間消灯やゴミ収集頻度の削減など、自治体の財政難に伴う行政サービスの縮小が顕著になっています。子どもたちの声で賑やかだった公園は閑散として、近所を見渡せば手入れのされていない空き家が目立つようになりました。
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は900万戸に達し、過去最多を更新しました。特に地方や郊外では、人口減少や高齢化を背景に、住宅が使われないまま残るケースが増えています。
「街ってこんなに廃れるんですね。まさにゴーストタウンといった状況です」
