【説3】国際貿易の知恵:英仏貿易が生んだ「単位換算」のブレイクスルー
最も歴史的・経済的な裏付けが強く、実務説として有力視されているのが、イギリスとフランスを中心とする大陸ヨーロッパ間のワイン貿易史である。当時、最大のワイン輸入国であったイギリスでは「英ガロン(インペリアルガロン=約4.54L)」という独自のヤード・ポンド法単位が使われていた。一方、ヨーロッパ大陸側ではメートル法への移行が進んでいく。
ここで、「750mlボトル×12本(1ケース)」の計算を行ってみよう。
・750ml × 12本 = 9.0 L
・2インペリアルガロン = 約4.54L × 2 = 約9.08 L
750mlボトル12本分(9L)は、ほぼぴったり「2英ガロン」に相当する。
異なる度量衡を使う国同士が取引する際、「1ケース=2ガロン」として計算を簡略化できる——この貿易上の利便性こそが、750mlをヨーロッパ全体のグローバルスタンダードへと押し上げた大きな推進力だったと考えられている。

【説4】流通と容器の合理化:225L「バリック」が刻む「300本」の法則
最後にご紹介するのが、ボルドーワインの輸送用樽(オーク樽)にまつわる説である。イギリスへボルドーワインを海上輸送する際、標準的とされた樽の容量は50英ガロン、すなわち225Lであった。これが今日、世界中の醸造所で親しまれている「バリック(Barrique)」のルーツである。
この225Lのバリック1樽から750mlボトルへ瓶詰すると、非常に美しい計算が成り立つのだ。
225L ÷ 0.75L = 300本
端数が一切出ず、ピッタリ300本のワインが充填できる。大容量の輸送容器(樽)と、小売・消費の単位(ボトル)の整合性が取れていることは、在庫管理や商取引において極めて合理的であった。


