不透明な高額工事が“素通り”…第三者管理で相次ぐ「アテミツ」
持ち込まれた資料を筆者が精査したところ、案の定、工事金額は相場より明らかに高額でした。
さらに、これまで6,000棟以上の総会資料を精査してきた筆者が、このA管理会社の傾向を調べると、驚くべき事実が判明します。同社が管理するほかのマンションでもまったく同じ相見積もりが行われ、例外なくA管理会社が工事を受注していたのです。
このカラクリを元管理会社社員の知人たちに確認すると、皆が口を揃えてこういいました。
「それは出来レースの見積もりです。業界では『アテミツ(当て見積もり)』と呼びます」
アテミツとは、自社が受注したい金額をあらかじめ設定し、それが安く見えるよう協力他社へさらに高額な見積もりを作ってもらう行為のことをいいます。管理会社自身が他の見積もり会社を選定し比較する立場にあるため、自社が負ける結果を提示するはずがありません。
昨今、マンション修繕工事の談合がニュースになりますが、第三者管理の投資用物件ではこうした構造が日常茶飯事です。
本来、居住者がいない物件においてプロが管理を担う「第三者管理」自体は、合理的な仕組みです。しかし「監視の目」がない場合、利益相反によって不透明な高額工事がそのまま通ってしまいます。
管理委託費の値上げも同様で、「年間100万円」とは書かず「月額数千円〜数万円」と小分けにすることで数字を小さく錯覚させ、相場を知らないオーナーに「物価高だし普通か」と納得させてしまうのです。
そして最も恐ろしいのは、一度「第三者管理」に変更すると、ほとんどの場合、もとの理事会方式には戻せない点です。管理会社にとってウハウハな環境を自ら手放すわけがなく、彼らから「もとに戻しましょう」と言い出す確率はほぼ0%です。
管理会社の言いなりにならない!資産を守る「3つの防衛策」
相談を受けた筆者は、管理会社に任せず組合側として独自に信頼できる外部業者から相見積もりを取得。適正相場を割り出して突きつけることで、不自然に上乗せされていた修繕費用を大幅に削減させることに成功しました。
「役員不要で楽」という甘い言葉の裏には、巨大なリスクが隠されています。管理会社の言いなりにならず、資産を守るための3つの防衛策をお伝えします。
1.安易に第三者管理へ移行させない
「役員をしなくていいから楽」というメリットだけに目を奪われてはいけません。前述のとおり、一度移行するともとの体制に戻すのは至難の業です。自分たちのチェック権限を失うリスクを考え、安易に可決させない姿勢が重要です。
2.すでに第三者管理が導入されてしまっても…諦めず、総会で自ら声を届ける
任せきりにすることが管理会社の暴走を許す最大の要因です。すでに第三者管理になっている物件であっても、総会会場へ足を運び、不透明な議案や高額な工事に対して疑問の声を上げることが抑止力になります。
3.人任せにせず自ら役員に立候補し、管理の主導権を握る
最も有力な自衛策は、オーナー自身が主体性を持つことです。自ら役員に立候補して管理組合の意思決定に関わり続けることで、管理会社の言いなりを防ぎ、健全な組合運営を維持することができます。
不動産投資は買ったら終わりではなく、管理の主導権を誰が握るかが勝負です。甘い誘い文句に惑わされず、オーナー自身が賢い「監視の目」を持つことこそが、自らの資産を守り抜く防衛策といえるでしょう。
幅 祐斗
HABANERO代表
マンション管理コンサルタント
宅地建物取引士
