「老後に不安」83.2%…お金が不安なまま使われている
こうした動きとは裏腹に、私たち国民のお金への不安・心配は拭えず、高い水準でとどまっているのが日本の現状です。各種調査(生命保険文化センター、OECD、内閣府など)は、お金の不安を抱える人が依然として多いことを示しています。
例えば、生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(2025年度)によると、自分の老後の生活に不安感があると答えた人の割合は83.2%に達しています(図表3)。
[図表3]老後生活に対する不安の有無 出典:(公財)生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(2025年度)
また、内閣府の国民生活に関する世論調査(令和7年8月)によると、日頃の生活の中で、悩みや不安を「感じている」「どちらかといえば感じている」と答えた者(2295人)に、悩みや不安を感じているのはどのようなことか聞いたところ、「老後の生活設計について」を挙げた者の割合が63.9%、「自分の健康について」を挙げた者の割合が62.7%、「今後の収入や資産の見通しについて」を挙げた者の割合が60.5%と高く、以下、「家族の健康について」(51.2%)、「現在の収入や資産について」(47.9%)などの順となっていました。
いずれにしても、お金の不安を抱えている人が多いということがうかがえます。
さまざまな制度が整い、知識が広がり、投資が身近になった今でさえ、8割を超える人がお金の不安を抱えて生きている。これが、日本のリアルな姿。その原因は、あなた自身にあるのではなく、私たちを取り巻く社会の構造そのものが、不安を生みやすい仕組みになっていることにあるのです。
その構造の正体を「不安通貨」という言葉で解き明かしていきます。不安通貨とは、不安という感情をまとったまま使われているお金のことです。お金のことを学べば学ぶほど、調べれば調べるほど、不安が増えていく。この不思議な現象の正体が、不安通貨の増殖です。
この不安通貨の存在があるからこそ、日本人の多くが、お金と接しているときに不安が付きまとうことが多いのです。
資産の多寡より「どう生きたいか」の基準が幸せを左右する
ここに1つ、象徴的な話があります。FIRE(経済的自立による早期リタイア)を達成した2人の50代男性の話です。
1人は、働かなくても生活していける十分な資産を持っています。独身で、扶養する家族もいません。頭では「もう大丈夫だ」とわかっています。それでもお金が使えません。
旅行が好きでファーストクラスに乗ってみたいという気持ちはあるのに、贅沢をすることが怖くて節約旅行を続け、働くのもやめられない。50代までずっと節約を重ねてきた生活スタイルを崩すこと自体が怖いのです。「もっと資産を増やさなければ」という思考から抜け出せないまま、お金を増やし続けています。でも、そこに幸せを感じているわけではありません。
もう1人も同じように、堅実に資産を築いた方です。ただ、こちらは会社員時代から「お金が貯まったらタイに移住して自由に暮らす」という目標を持っていました。その目標のために資産運用を続け、達成した後は実際にタイへ移住し、自分らしい毎日を過ごしています。
同じ50代、同じ独身、同じように資産を持っている。しかし一方はお金に縛られ、もう一方はお金を味方にしています。
この違いを生んだのは、資産の額ではありません。まさにお金との関係性の差で、「自分はどう生きたいのか」という基準を持っていたかどうかです。
櫻井 かすみ
ママ金融投資家/ファイナンシャル・プランナー/株式会社トウシナビ 代表
