◆ずさんな対応で不登校へ追い込まれた過去
――ところで、素二愛さんは21歳で独り暮らしをしますが、お母様と住む選択肢はなかったのでしょうか。素二愛:母と一緒に、祖母と同居をする話もありました。けれども当時、私が非常に精神的に不安定で、祖母に心配をかけたくなかったんです。それで母にお願いして、祖母と2人だけで住んでもらうことにしました。
――差し支えなければ、精神的に不安定になった理由について教えてください。
素二愛:根本の原因としては、中学時代の性被害だと思います。相手は同級生でした。まったく突然に被害に遭い、当時は何が何だかわからずに学校へ報告したんです。しかし結果的には「お互いに謝って終わりにしましょう」という、ことなかれ主義に落ち着いてしまいました。しかもそのことが、男子生徒の取り巻きに「素二愛が◯◯くんを陥れようとした」とねじ曲がって伝わってしまい、イジメの対象になりました。
――イジメはどのようなものでしたか。
素二愛:席が勝手にどかされていたり、すれ違いざまに暴言を吐かれたり蹴られたり……結局、それがきっかけで不登校になり、望んでいた進学先を受験することもできませんでした。いわゆる思春期病棟に入院もしました。
◆父の気質を過激にした壮絶な背景
――ご家族の受け止めはいかがでしたか。素二愛:父は“根性論”を掲げて人生を切り開いてきた人なので、「精神疾患なんて気の持ちようで克服できる」と考えていたと思います。動画を回しながら私のことを蹴飛ばして、「演技だろう?」と笑っていました。また、それを私の主治医に得意げに見せて、困惑させていました。
――かなりアクの強いお父様ですね。
素二愛:一般的には、毒親と呼ばれる部類だと思います。ただ、私にはどうしても、父の人格がそのようになったことが父だけの責任のように思えないところがあります。
――どういうことでしょうか。
素二愛:実は、父はイラン・イラク戦争にも参加した兵士でした。生きながらえはしたものの、死と隣合せの恐怖を常に肌身で感じていたといいます。そして彼自身、PTSDから精神疾患を発症した経験がありました。また、生家は貧困にあえぎ、10人近くのきょうだいがいたことから、そのうちの何人かが亡くなる不幸もあったようです。こうした背景から、愛情に飢えた人になったのではないかと考えています。家族をどのように愛せばいいか、本当は本人がいちばん苦しんだのではないかと思うんです。

