◆入社初日に「私には仕事が覚えられません!」と退職

「大人しそうな方でしたが、イマドキの普通の女の子でした」
入社挨拶を終え、いざ仕事開始。しかし女性はメモを取ることもなく上の空。百合子さんは「聞いているのかな?」と不安になったという。何か聞いても「はい……」という自信なさ気な返事が返ってくる。
「休憩時間に、なんで半導体の仕事に興味を持ったのか聞いてみたんです。そしたら『求人に簡単な仕事って書いてあって。でも、こんなにたくさん業務があるって聞いてなかったんです』って言われて。あんまり働きたくないのかなって思いました」
初日ということもあり、ざっと1日の仕事の流れを伝えて終わった。もともと百合子さんは初日にあれもこれも教えるのは難しいと考えていたが、あまり教える気にもならなかった。その女性は帰宅前に部長のもとに行き、会社を後にした。
しかし翌日以降、彼女が仕事場に姿を現すことはなかった。

部長も「不思議な人だったね」と話していたそうで、新入社員の入社時期になると、だれもが思い出すのだとか……。
<取材・文/星谷なな>
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◆■ 数字で見る「新卒3年以内3割」の実態

・大卒の3年以内離職率:33.8%(1年目12.1%/2年目11.9%/3年目9.9%)
・高卒の3年以内離職率:37.9%(1年目17.9%/2年目11.5%/3年目8.5%)
・短大等卒の3年以内離職率:44.5%(1年目19.3%/2年目13.7%/3年目11.5%)
・中卒の3年以内離職率:54.1%(1年目32.9%/2年目13.0%/3年目8.1%)
注目すべきは、1年目離職率の違いです。大卒12.1%に対し、短大等卒は19.3%、高卒は17.9%。学歴によって“最初の1年”を乗り越えられるかどうかに大きな差があることが見えてきます。大卒の場合、3年以内離職者のうち3人に1人以上が「1年目」で辞めている計算になり、「3か月で辞めた」「入社初日で辞めた」——今回ご紹介した2つのエピソードも、決して特殊なケースというわけではないのかもしれません。
大卒の3年以内離職率の推移を1年目〜3年目の内訳で見ると、以下のようになります。
・令和2年3月卒:1年目10.6%/2年目11.3%/3年目10.4%
・令和3年3月卒:1年目12.3%/2年目12.3%/3年目10.2%
・令和4年3月卒:1年目12.1%/2年目11.9%/3年目9.9%
コロナ禍で入社した令和2年卒だけは1年目離職率が10%台前半と低く抑えられている一方、その後の世代では1年目で辞める割合が12%台に戻り、“入社1年目のうちに見切りをつける”若者が一定数いる構図が続いています。
“菓子折り”の意味を取り違えた男性も、「簡単な仕事」の求人に応募した女性も、この3割のうちのひとりだった可能性は十分にあります。毎年繰り返される新入社員の離職ドラマ——あなたの職場にも、忘れられない“あの人”がいるのではないでしょうか。

【星谷なな】
5歳の頃からサスペンスドラマを嗜むフリーライター。餃子大好き27歳。 たまに写真も撮ります。

