◆クレジットカード番号が詐欺サイトに…
「その後、大手の婚活アプリで、若い女性とマッチしました。飛び抜けた美人ではなくて、プロフィールも年収200万円ほど。ごく普通の女性に見えました。詐欺に使われる写真は、いかにも加工した美女ばかりだと思っていたので、逆に『この人は本物かもしれない』と信用してしまったんです」女性は「付き合いたい」「魅力的だ」と好意を寄せ、やがてメールで直接やり取りしたいと持ちかけてきた。石原さんも次第に夢中になり、実際に会った後のことまで想像するようになったという。
ところが、しばらくすると女性宛てのメールが突然届かなくなった。数日後、別のアドレスから連絡があり、「利用していたメールサービスが、運営会社の倒産で使えなくなった」と説明された。
「別の出会い系サイトに移ったので、そっちに登録してほしいって。今思えば、おかしいんですよ。でも、連絡が途絶えて、本気で心配していた。再び連絡が来た安心感もあって、疑う気持ちは消えていました。すぐに連絡を取りたい一心で、指定されたサイトを開いて、クレジットカード番号などを入力した直後、パソコンの内蔵カメラが勝手に作動し始めたんです。その瞬間、詐欺だと気付きました……」
慌てて、退会しようとしてもできない。サイト名を検索すると、「詐欺サイトなので注意」という情報が次々と出てくる。石原さんはすぐにカード会社や警察へ連絡し、カードを停止。サイト側にも、悪用できない措置を取ったと警告するメールを送った。
「無我夢中で、半分泣きながらやりましたよ。カードは破棄して、契約そのものも解約しました。幸い金銭的な被害はありませんでしたが、個人情報を知られたことが今でも怖い。それに、あの時、撮影された映像も何に使われるのか、不安で仕方がないです」
◆安心感を誘う素人らしさの正体
石原さんは、「あの女性は、AIで巧妙に作られた人物だったはずです」と、その理由をこう語る。「詐欺をする側が、自分や仲間の本当の顔をさらすとは思えない。おそらく、写真もプロフィールも、こちらを信用させるために作られたものだったのでしょう。正直言えば、絶世の美女ではなかったから、『僕も相手をしてもらえる』と思ってしまった。それが、甘かったんですよね……」
「普通だからこそ信じてしまう」。AI女性を悪用した詐欺は、人間の恋愛感情や安心感を巧みに利用しながら、今も静かに被害者を増やしているのかもしれない。
<取材・文/橋本未来>
【橋本未来】
主に関西圏で広告関係やマガジン系の仕事をしながら、映像の企画・構成なども手掛ける。芸人さんやちょっと変わった経営者さんなどの話を聞くのがライフワーク Twitter:@h_mirai1987

