◆カラスの襲来が地獄絵図を招く
玄関を開けて様子をうかがうと、想像を絶する凄惨な光景が広がっていたという。「カラスが生ゴミの臭いを嗅ぎつけたみたいで、ゴミ袋が食いちぎられて、廊下に盛大に中身がぶちまけられていたんです。例の隣人の部屋のドアの前には腐った汁が池みたいに広がっていて、ひどい状態でした……」
そこに隣人の姿もあった。
「隣人はドアを開けて外に出たところ、腐った汁の池にサンダル履きの足を突っ込んじゃったみたいで……自分の足元を見つめたまま呆然としていました。どうするんだろうと思っていましたが、さすがに放置はできないと思ったんでしょうね。『オエェ!』とえづきながらゴミを回収し始めたんです」
その後、外出して戻ってきた黒田さんが目にしたのは、意外な光景だった。
「ホームセンターにでも行って買ってきたのか、自室から伸ばしたホースで水を撒きながら、デッキブラシで廊下を掃除していたんです。汗だくで掃除している姿はちょっと気の毒でしたが、正直、自業自得だと思いました」
この一件以来、隣人は共用部にゴミを一切置かなくなったという。
「あれだけ注意しても直らなかったのに、カラスがやってきてあっさり解決するなんて……。悪臭に悩まされていた日々が嘘みたいでしたよ」
<TEXT/和泉太郎>
【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め

