東京地検トップの検事正に2026年8月12日付で就任した松下裕子(ひろこ)氏(58)が8月13日、東京・霞が関の同庁で記者会見を開いた。

特捜部に所属した検事をめぐる不祥事が相次ぐなか、特捜部の存在意義について問われた松下氏は、過去の事件を踏まえれば「一定程度ある」と説明。検察官の人権意識が欠けているとの指摘があることについては「本当に申し訳ない」と話した。ただ、批判されている検察官の行動や言動は、違法行為をした人を「説得して反省してもらいたいという気持ち」や「行き過ぎた正義感や責任感」から起きているとの見方を示し、仮にそうであれば「本当に改めていかなければならない」と話した。
「権限の大きさに対する『恐れ』『畏怖』の気持ち」
東京地検では、特捜部に在籍した検事をめぐる問題が続いている。7月29日には、捜査で取り調べた女性と性的関係を持ち、別事件の取り調べのため公費で確保したホテル客室を性的行為に使ったなどとして、西田将仁検事(48)が懲戒免職になった。
別の元特捜部検事、堀木博司検事(58)=現・大阪高検=については、太陽光発電会社の社長が違法な取り調べで精神的苦痛を受けたとして、国に1100万円の賠償を求める訴訟を起こしている。8月10日に東京地裁で行われた口頭弁論では、約205時間に及ぶ取り調べのうち、原告側が違法だと主張する1時間余りの録音・録画映像が法廷で再生された。その中で、堀木検事は「検察庁を敵視するということは反社(反社会的勢力)や」などと述べていた。
松下氏は、個別事案へのコメントを避ける一方で、不祥事が相次いでいることには「大変遺憾」とし、「検察幹部の一人として、国民の皆様に対して申し訳なく思っている」と述べた。その上で、検察が行使する権限はすべて法律によって託され、適正に行使することが「当然の前提」だと説明。「その信頼を損ねてしまっては、私たちの仕事は成り立たない」と語り、特捜部かどうかを問わず、検察に身を置く者は「自分たちの権限の大きさに対する『恐れ』『畏怖』の気持ち」を忘れずに、適切に権限を行使することが大切だとした。
「自分が絶対的な正義」だと思っていないか
不祥事が相次ぐ特捜部の存在意義については、「複雑・困難な経済事件」など、「検察でなければ対応できない事件」もあるため、「一定程度」あるとした。
一方、人権意識が欠けているとの指摘には「本当に申し訳なく思っている」と陳謝。批判されている取り調べ方は「検察として容認・推奨しているわけではない」とも話した。ただ、検察官は人権を制約し得る強い権限を持つだけに、「それが自分の力であるかのように錯覚」したり、違法行為をした人を「説得して反省させたいとの思い」から行っていることだと推測しながらも、その結果として「自分が絶対的な正義」であるかのような意識を持ったりしてはならないとした。
「行き過ぎた正義感や責任感」が、傍から見て人権軽視や傲慢と受け取られる言動につながるとすれば、「本当に改めていかなければならない」とも述べた。権限は法律で与えられたものであり、「お預かりしているもの」だと全員が認識し、一つ一つの仕事で丁寧な姿勢を重ねることで理解を得たいとした。