
マイホームの建て替えやリフォームを検討する際、間取りや予算の計画に目を奪われがちですが、真っ先に確認すべきは「敷地に接する道路の条件」です。購入時や新築時には問題にならなかった土地でも、現在の建築基準や測定基準に当てはめた際、予期せぬ制限や手続きが発生するリスクを潜んでいます。今回は、自宅をバリアフリー構造に建て替えたい60代男性Cさんの事例をもとに、土地の境界の専門家である土地家屋調査士・小川曜氏が建て替え時に知っておくべき道路幅の「表記と実態」のギャップについて解説します。※プライバシーに配慮し、複数の事例を再構成して記事化しています。
自宅は区画整理地にあるのに、建て替えができない!?
今回の相談者は、自宅の建て替えを検討している60代男性のCさんです。
Cさんが所有する土地は、昭和後半に区画整理事業が完了した、比較的整然とした区画にあります。道路幅が少し狭く、車の駐車に多少の不便さはあったものの、それ以外は特に問題なく、きれいな街並みを気に入って長年住み続けていました。
しかし、建物の老朽化が進んだことや、加齢に伴い身体への負担を感じるようになったため、バリアフリー対応の平屋へと建て替えることを決意します。区画整理が完了している土地で、図面も存在し、現地にはコンクリート杭等の境界標も残っていました。そのためCさんは「境界を確認するための測量は不要だろう」と考えていたのです。
しかし、設計事務所に建物の設計を依頼したところ、担当の建築士から予想外の話が。担当者は「現地の道路幅員が4mないため、このままでは建物を建てることができない」といいます。
Cさんにしてみれば、購入当時は「建物を建てられる土地」として購入しており、実際に現在の建物を建築できているわけですから、なぜこのような事態になったのかまったく理解できません。
詳しく事情を聞くと、「建物を建てるためには、役所と協議して道路境界の幅員が4mになるよう再確認(再査定)をしなければならない」とのこと。 このような経緯から測量が必要となり、土地家屋調査士である筆者のもとへ相談が持ち込まれました。
建築基準法の「接道義務」…接している道路幅が4m未満の場合は?
建築基準法上、建物を建てるためには「幅員4m以上の道路に2m以上接していること(接道義務)」が求められます。
ただし、4m未満の道路に接しているからといって、絶対に家が建てられないわけではありません。建築基準法が施行された際などにすでに存在していた道路で、特定行政庁の指定を受けた道路(いわゆる「みなし道路」や「2項道路」)であれば建築が認められます。たとえば2項道路の場合、道路の中心線から水平距離で2m後退(セットバック)した線を道路境界線とみなし、その内側であれば建物を建築できる仕組みです。
しかし、Cさんの土地に接する道路は、建築基準法の施行以降の昭和後半から平成にかけて、土地区画整理事業によって造られた道路であるため、2項道路として扱うことはできませんでした。
役所で調査をしたところ、図面上の幅員は4mに満たないものの、行政としては「幅員4mの道路」として認定しており、建築基準法上の道路(第42条第1項第1号)に該当することがわかりました。
つまり、法律上の道路に接しているため、建物の建築自体は可能ですが、図面上の寸法が4mに満たないため、改めて幅員を4mとして再確認(再査定)する手続きが必要だったのです。
※なお、対応は役所や土地の状況によって異なります。そのため、道路幅が4m未満で、かつ2項道路でもない場合は、どのような手続きが必要か事前に役所へ確認することが重要です。なかには、「1cm以内の誤差であれば許容範囲とし、再査定は任意」とされるケースもあります。今回のCさんの事例では、1cm以上足りない箇所があったため、再査定が必須と判断されました。「図面では4mだが、実際には4mない」そんな事態が起こる原因
Cさんは、自宅の土地の図面には道路両端の点間距離が「4.000m」と記載されていたため、「4mある」と誤認していました。このように、図面に4mと記載されていても実際の数値が下回ってしまう背景には、主に以下の2つの原因があります。
1.四捨五入による数値の「繰上げ」
測量の世界では、最小単位をミリメートルとし、メートル表記の場合は小数点第3位(0.000m)まで扱いますが、小数点第4位以下の数値が生じた場合には、四捨五入や切り捨て処理を行います。
たとえば、実際の点間距離が「3.9996m」だった場合、四捨五入により図面上は「4.000m」と記載されます。この数ミリの差により、図面上の記載は4mでも、実際の座標データから計算すると4mに満たないという事態が起こるのです。
2.幅員を「垂線」で計算していない
道路の幅員は、対向する境界線に対して直角(垂線)に測るのが原則です。しかしなかには、斜め方向にある折れ点間の距離が「幅員」として記載されているケースも。斜め方向の距離は、直角の距離よりも長くなるため、斜めに測って4mあっても、正しい直角で測り直すと4mに満たないという事態が生じます。
道路幅が4mギリギリの場合には、図面の数値を鵜呑みにせず、座標データから点間距離と垂線距離を正確に計算しなければなりません。
本来、これらは稀なケースなのですが、驚くべきことに、Cさんの土地では、この2つの原因の両方が当てはまっていました。
