「私、もう限界かも…」年金月10万円・78歳母の介護を続けた54歳娘の後悔。〈特養〉を申し込んだ2年後、念願の入居と引き換えに払った“大きすぎる代償”【元介護施設職員のFPが解説】

「私、もう限界かも…」年金月10万円・78歳母の介護を続けた54歳娘の後悔。〈特養〉を申し込んだ2年後、念願の入居と引き換えに払った“大きすぎる代償”【元介護施設職員のFPが解説】

特別養護老人ホームの空きを待つ間に、介護者の減収や介護費用の持ち出しが膨らみ、結果的に数百万円もの損失を生むケースもあります。目先の施設費だけを比べて「特養が空くまで待つ」と決めると、家族の収入や健康、そして自身の老後資金まで失うことになりかねません。本記事では事例をもとに、特養待機に潜むリスクと親の介護と子どもの生活を両立する方法について、元介護施設職員でFPの武田拓也氏が解説します。

年金月10万円・78歳母の「特養」入居を待つ54歳娘

会社員のミナミさん(54歳・仮名)は、同じ市内で一人暮らしをしている母・カズコさん(78歳・仮名)の介護をしていました。父はすでに他界しており、母の年金収入は月約10万円です。預貯金は約150万円しかありません。

カズコさんは脳梗塞の後遺症で歩行が不安定になり、「要介護3」と認定されました。自宅では週3回のデイサービス、週2回の訪問介護を利用していますが、排泄や入浴、服薬管理にはミナミさんの支援が欠かせません。

ミナミさんがケアマネジャーに施設入居を相談すると、民間の老人ホームでは月額15万~25万円程度かかるところが多く、母の年金だけでは到底足りません。

そこで低額で入居できる特別養護老人ホーム、いわゆる「特養」に申し込みました。

原則として、特養は要介護3以上の人が対象です。施設の担当者からは「現在、入居を待っている方が10人以上いらっしゃいます。いつご入居いただけるかはわかりません」と説明されました。

ミナミさんは母の家から近い施設に申し込みました。しかし、この判断が大きな誤算となります。

「私、もう限界かも…」在宅介護を続けた娘の代償

特養へ入所できるのは申し込み順ではありません。要介護度、認知症の状態、介護者の有無、家族の健康状態、在宅生活の危険性などをもとに、入所の必要性が高い人から優先されます。

自治体や施設ごとに細かな基準は異なりますが「待機者が10人いるから自分は11番目」とは限らないのです。

厚生労働省の発表によると、2025年4月時点で特養を申し込んでいる要介護3以上の人は、全国で約20万6,000人。そのうち、在宅で待っている人は約8万6,000人です。数字には、すぐに入居を希望していない人なども含まれますが、地域によって入居まで長期間を要することがあります。

ところが、ミナミさんは「申し込みさえ済ませれば、あとは施設からの連絡を待てばよい」と思い込んでいました。

ミナミさんは朝7時に母の家へ行き、朝食と服薬を確認してから出勤。夕方には再び母の家へ寄り、食事や排泄を介助して自宅に戻る生活を続けました。

夜中に母から電話がかかってくることもあります。寝不足で仕事中にミスが増え、上司から体調を心配されるようになりました。

「私、もう限界かも……」

ミナミさんは退職を考えましたが、54歳で仕事を辞めれば再就職できたとしても収入が大きく下がる可能性があります。自身の老後資金も十分ではありません。

そこで退職は避け、1日8時間勤務から6時間勤務へ変更しました。その結果、残業代やボーナス、役職手当を含めて手取り収入は月約15万円減少しました。

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