県外の学生たちが、見知らぬ土地の物流現場に飛び込んでいく。 今年のはじめ、私たちが三重県で形にした「関係人口文脈での産学連携プロジェクト」のワンシーンです。
私たち株式会社フューチャーリンクネットワーク(以降FLN)が三重県で手掛けたこの産学連携プロジェクトにおいて、欠かせない存在がいます。企業と学生、その“あいだ”に立ち、両者を現場で繋いでくれた株式会社三重シティプロモーションです。
地域で新しい取り組みを実現するには、想いや仕組みだけでは十分ではありません。自治体や地域企業と日々向き合い、地域の声を知り、一つひとつ信頼関係を積み重ねてきた現地の橋渡し役「ナカビト」の存在があってこそ、私たちの描く理想は初めて現実みをおびたものになります。 「ナカビト」とは、私たちが好んで使っている言葉です。単なるコーディネーターの枠にとどまらず、必要な人材をつなぎ、新たな関係を構築して育てながら、次のステージへと伴走する。私たちは、そんな彼らへの敬意を込めてそう呼んでいます。
地元企業に対しては、まず「こんな取り組みがある」と存在を紹介して私たちと繋ぎ合わせ、その後も定期的なフォローを欠かしません。一度きりではなく、日常的に足を運んで関係値を継続してくれるからこそ、企業側も学生を受け入れてみようかと安心して一歩を踏み出すことができます。
そして学生には「この地域・企業と関わる意味」を伝えるだけでなく、私たちでは手が届かない“現地での手厚いサポート”で活動を力強く支えてくれます。地域への信頼をベースに、その双方を橋渡しする、単なるマッチングではなく、関係人口の“質”を高める伴走型の役割です。「ナカビト」がいることで、地域と人との関わりは、一度きりで終わらず続いていきます。
なぜ、この会社にはそんな橋渡しができるのか。 ここからは、三重シティプロモーションの成り立ちから、私たちが今日の関係性になるまでの軌跡を紐解いていきます。
銀行員から起業へ。故郷・三重への恩返しを誓うまで
代表でありながら、自らプレイヤーとして最前線で三重県内を飛び回っている三重シティプロモーション代表取締役社長の森田裕行(もりたひろゆき)さん。実は、元・地方銀行の経営職という経歴を持っています。

左が森田さん、右はFLN代表取締役社長の石井
今の職への転身の原点にあるのは、三世代同居の家庭で育ち、豊かな自然のなかで祖父母や両親と共に地域産業に触れ、地域の歴史の重要性を理解しながら、三重県という地域に深く関わってきたことにあります。
地域に貢献するため、地方銀行で活躍するという志を持ち、経営に携わる立場まで進むなかで目の当たりにしたのは、愛する故郷が少しずつ、日本全国どこにでもあるような地域問題に直面しているという現実でした。「誰が主体となって解決するのか?」「今の立場で本当に貢献できるのか?」という不安を抱く中で、「地域に恩返しがしたい」という強い使命感が芽生えた森田さん。
銀行員として培った知識や、地域に関わる志を同じくする多くの企業同士のつながりを次世代のために活かそうと決意し、今の世界へと飛び込みました。そして2022年1月、森田さんが設立したのが三重シティプロモーションです。
銀行員時代に培ったのは、人との関わりの重要性です。「人を知る」ということは、経営者の想いや企業の強み、商流、そしてその先にある可能性を見極める力でもあります。その経験は今、地域や企業が抱える課題の本質を捉え、「誰と誰をつなげれば、新しい価値や関係が生まれるのか」を考える力へとつながっています。
企業同士だけではなく、地域と企業、自治体、大学・学生など、それぞれの強みや想いを理解し、必要な相手を結びつける。そして、出会いをつくるだけで終わらせず、新たな取り組みへと育てていく。銀行員時代に培った「人と企業を見る力」は、形を変えながら、現在の三重シティプロモーションが担う“ナカビト”としての役割の確固たる土台になっています。
パートナー企業として——三重県全域を“面”で担う「まいぷれ」
三重シティプロモーションが私たちFLNのパートナー企業となり、地域情報プラットフォーム「まいぷれ」の運営をスタートしたこと。それこそが、現在に続く共創の原点でした。
運営開始から徐々にエリアを拡大し、津・松阪、鈴鹿・亀山、伊賀・名張、伊勢・鳥羽・志摩、四日市・桑名、尾鷲・熊野……三重県を6エリアに分けたポータルサイトと、全域を束ねる集約版「まいぷれ みえ」を運営し、南北およそ200kmに広がる三重の情報を一つに束ねています。2025年4月には名張市と行政情報発信の協定も締結しました。
地元に入り込んでいるからこそ見えてくる企業・店舗・人の魅力。そうした地域のリアルな情報をオンラインで届けながら、三重県全体を“面”でつないでいく仕組みを築いてきました。しかし、その価値は情報を発信することだけにとどまりません。地域との日々の接点を通じて、人や企業との信頼関係が積み重なり、新たな相談や出会いが生まれていく。この地域との関係の蓄積こそが、その後の企業連携や自治体との取り組み、さらには産学連携へと活動を広げていく土台となりました。
地域を「知り、伝える」ことから始まった取り組みは、やがて地域を「つなぎ、動かす」取り組みへ。その原点が、三重シティプロモーションとFLNの最初の一歩でした。

