母と祖父母が絶縁した理由
カスミさんの成人祝いの日、母の口から明かされたのは、実家との決別の理由です。話はいまから約20年前、カスミさんの両親が婚約したときにさかのぼります。
当時、母が婚約を報告すると、母の両親(カスミさんの祖父母)は大反対しました。反対の理由を尋ねても、「とにかく気に入らない」「ろくな男じゃない」と論理的でない感情論ばかり。「あとから振り返ると、両親はただ私を誰かに取られてしまうのが嫌だったんだと思う」と母は振り返ります。
説得を試みるなかで、母の両親は母の婚約者(現在のカスミさんの父)に対し、さまざまな暴言を吐きました。「本当に結婚するならあなたとは絶縁する」と叫び、頼んでもいないのに「お前たちに金銭的な援助なんて絶対にしないからな!」と吐き捨て、父の存在や人格そのものを否定するような言葉を投げつけたのです。婚約者が自分の親から理不尽に踏みにじられた瞬間、母のなかでなにかが弾け飛びました。
「親子だからってさすがに許せない」そう決意した母は、実家と決別。その後母には、母の両親から「別れるなら戻ってきてもいい」と何度か連絡が入ることがあったそうです。しかし母は、「夫にきちんと謝罪をするまでは会えない」と返答。これに対し両親は「なにも悪くない私たちが、なぜ謝らなければいけないのか」と、平行線のまま20年近くが経過し、今日に至ったといいます。
母が抱え続けた18年間の葛藤
母は、ずっと胸に秘めていた苦しさを明かしました。
「本当はね、カスミがわかる年齢になったら話そうと思っていたの。でも、小学生のカスミに初めて両親のことを聞かれたとき、焦って思わず『死んじゃった』って嘘をついてしまった。ずっと嘘をついていてごめんね」
母にとって、この18年間は自責の念との戦いでもあったようです。カスミさんをお腹に宿したときから、「自分の一存のせいで、娘から祖父母という存在を奪ってしまっているのではないか」と悩み続けた母。さらに、「親と仲直りすらできない自分が、もし将来、娘が友達と喧嘩したときに『仲直りしなさい』なんて言えるのだろうか」と、母親としての自分に自信を持てなくなることもあったそうです。
母が実家と決別した背景には、結婚相手である父と、その両親(父方の祖父母)の存在もありました。実家と絶縁したあと、父やその家族と過ごすなかで、母は「それ、普通じゃないよ」「そんなこと親から言われる筋合いはないよ」と、教えてもらう機会が何度もあったといいます。
「彼らと接するようになって初めて、改めて自分の両親について考えたの。自分の頭の中にはなかった“普通の温かい家族”のお手本を、夫と義両親が見せてくれた。この人たちと家族になれたことは、私の人生にとっても、カスミにとっても本当に幸運なことだったと思ってる」
18歳になり、すべてを知ったカスミさんは、母の強さと、自分を守り抜いてくれた深い愛情を、手渡された小さなピアスとともにしっかりと受け止めていました。
