しかし、保育園や幼稚園以外で、野外をフィールドに保育の行う形があるという。それが「自主保育」だ。初めて聞いたという人もいるのではないだろうか。
「自主保育は、『母親同士で当番を決めて子どもらの面倒を見る』『活動拠点は野外』『幼稚園などに通うことなく就学前まで活動』といった、特徴のある保育方法です。既存の保育所よりも、子どもらが自由に過ごしている印象がありますね」
こう教えてくれたのは、『赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない。』の著者・境 治さん。
保育所はいまだ不足している。そんななか、自主保育は「保育所が足りないなら、自分たちで協力し合おう」という考えをきっかけに誕生したという。たとえば、東京なら、多摩川の土手で活動する「自主保育・野毛風の子」がある。
「3歳までの子は、その子のお母さんが付き添いますが、幼稚園の年齢なったら『あずけ合い』ができます。その時、当番のお母さんは子どもたちを見守るだけ。本当に子どもが自由に動き回っていえるのを見ているだけなのです。たとえば、子どもが川の石の上を渡ったりするのも、『危ないからやめなさい』とは決していわず、遊ばせておきます」
また、ほかの子どもとケンカしても親は一切介入せず、自分たちで解決しているのだとか。
「子どもをあずけ合うには、信頼関係が欠かせません。『野毛風の子』では、その日の終わりにその日あったことを1時間程度話し合い、月1回のミーティングをしています。この時、遠慮せずに思ったことをぶつけ合うんです」
いわゆる「ママ友」のイメージでは、ストレートに意見をいい合ってしまうと、その後の人間関係に不安を感じそうだけど…。
「一般に、ママが公園などで子どもを遊ばせる場合、ほかの親子と関わるのをなるべく避けがちになりますよね。これは、自分の子どもがほかの子どもと一緒に育っていくんだ、という意識がないから。自主保育の場合は、“みんなで子どもを育てている”という考えなので、ほかの家の子どもも自分の子どものように接するんです。自分の子どもに話かけるように、気づいたことはハッキリといいます」
こういった姿は、兄弟姉妹や親せきの多い環境で子どもが遊びまわり、親同士は会話を楽しんでいるという光景にも似ている。「保育の主流にはならないかもしれないが、“みんなで育てる”という考えが広まれば、子育ての時に感じるしんどさは減るはず」と境さんは話す。
自主保育はその活動上、フルタイムで働いているママが参加するには難しい。基本的にはパートやフリーランスなど、時間に融通の効く人向けになる。とはいえ、子育ての負担を自分だけで抱え込まないというヒントになるのではないだろうか。
(南澤悠佳/ノオト)